酒と本音








指名された席に行くと、そこには白髪頭の男が座っていた。声をかけると、顔を赤らめた表情とぶつかり妙は眉間にしわを寄せた。

「もう、どれだけ飲んで来たんですか?」
「んなに、飲んでねェよ。うるせーな、お前は俺の母ちゃんですか」
「金払えねーくせに威張ってんじゃねぇよ」

男の頭を鷲掴んで力を込める。メキメキと音がしだすと次第に男が悲鳴を上げはじめた。

「ちょォォォ!!やめてェェ銀さんが悪かった!許しておねーさん!」
「もう、本当に情けないんだから」

妙の手首を握ると必死に抵抗しだして、謝罪を述べた銀時にようやく手を除けた。
隣で大袈裟に頭を抱える男に、妙は首を傾げる。仕事の報酬がよかったのだろうか。もう既に一杯、いやそれ以上に飲んでいそうだった。また長谷川と飲んでいたのだろうけれど、何故こちらに来たのか。

「銀さん、長谷川さんは?」
「え?!何で一緒にいたの知ってんの?!」
「だって銀さんのお友達って長谷川さんくらいしかいないじゃない」
「おねーさん何気にさらっと酷いこと言ったよね。銀さん、長谷川さんだけじゃないからね。他にも友達…えーっと…誰だっけ」

視界がぼやけているのか、指は三本折られているのに一本と数えていた。

「ちょっと、本当にベロベロじゃない。今日はもう帰った方がいいですよ?」

そろそろ会話も怪しくなって来た銀時の腕を掴んで立ち上がろうとした。

「すみませんお妙さん、指名が入りました」

黒服が近づいくと妙の指名を告げた。
最近、よく贔屓にしてくれる方だった。そろりと銀時を見る。こんな酔っ払いを相手にしていては埒が明かない。

「じゃぁ銀さん私、指名入っちゃったから行きますね。早めに帰って下さいね」

そう言うと早々に銀時の腕を離して妙は、席を立とうと腰を上げた。



「おい」

低い声が聞こえたかと思うと妙の腕を掴んだ。銀時も立ち上がると、掴んだ腕をさらに引き寄せるように力を籠められてその反動で、妙の身体は銀時の腕の中に倒れこんだ。同時に去ろうとしていた黒服にも同じように声をかけた。

「な、なにする」
「指名は俺が先だろ。こいつ、今夜は俺だけだから」

黒服がたじろぐのが背中越しに感じた。
何を言ってるの。この酔っ払い野郎を殴ってやりたいのに、引き寄せられたまま妙の体すべてを腕に仕舞い込まれてしまっていて何も出来なかった。

「何だったら、これから先一生でも構わねェけど」


何も言えずにいる黒服にさらに畳みかけるように告げる銀時に、もう辛抱たまらず膝蹴りを腹に送り込んでやった。



「…お酒の力を借りて言うなんて、本当に最低」


伸びる銀時を前に、しかし赤く染まった頬の赤みが引くまで妙は銀時の席から離れることはできなかった。








原作設定で公衆の前で告白銀妙
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2014.08.22





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