いづれ言うから待っていて






「言葉って口で呟くだけじゃないと思うんです」

高く括った黒髪が歩くたびに左右に揺れる。
前を歩く女がそっと呟いた。意識していなければ聞こえなかった程、小さな声で。ずっと並んで歩くことを躊躇っていた銀時に妙は振り向いてこう言った。

「分かってますから」

だから、そんなに怯えないで。そう言ってまた前を向く。
銀時は小さく舌打ちをした。惚れた女にここまで言わせてしまった己の情けなさに。それでも言葉できない自分を分かっていると。

「ああ、本当にお前って」

いい女だな、最後の言葉は呑み込んだ。またいづれ時がくれば必ず言うから。そのまま黙り込んだ銀時に妙は柔らかく微笑んだ。




2014.05.26





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