口説き文句
「起きて下さいな」
銀髪頭の男の肩を軽く叩く。心地よい眠りを妨げるのに多少気が引けたが、時間が来てしまった。早く支度をしなければ。
「銀さん、起きて」
「ん…」
目にかかった前髪を優しく払う。渋々目を開けた銀時の瞳を妙は覗き込んだ。目覚めたばかりで焦点が合っていない目を見て、クスリと笑う。
「…もう、時間?」
妙から目を逸らして壁に掛かった時計を睨むようにした銀時は、妙の膝から名残惜しそうにゆっくりと体を起こした。
「こんなに寝たら夜寝れませんよ」
大きな欠伸をした銀時を、やっと立ち上がれた妙が見下ろした。そのまま眠そうな銀時を置いて支度に向かおうとする妙の腕を銀時は掴んだ。
「夜迎えに行く」
「…遅くなるかもしれないですよ?」
「別に構わねェよ」
銀時も立ち上がり妙の耳元に唇を寄せた。
「その為に、たっぷり充電したから」
銀時の囁いた声に熱がこもっていて、妙は身震いした。本当にこの人は。腰に伸びてきた銀時の手の甲を妙は強く抓った。
(膝枕のお返しに腕枕してやるのに)
(いりません!)
2014.05.16
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