くちびるに触れたら






 表面が触れるだけのキス。そう呼んでいいのか疑うほど一瞬の出来事だった。今まで必死に守ってきた殻を強引に破っておきながら、何事もなかったかのように、背を向けて未だ知らぬふりをし続ける男めがけて巾着を投げつける。

「あなたが悪いんですからね」

 目を丸くして驚いて振り向いた男が何かを口にするより先、詰め寄ると胸元を掴んで引き寄せ乾いた唇に押し当てた。




2016.11.06





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