※モブ女×豪炎寺 ※今回は吹雪くん無し 「おはよ狸寝入りのしゅうちゃん。」 「あと、する気はないです。」 「だって今日が初体験でしょ?」 「浮気?」 「いや、今日は休館日、」 なぁ、ごめんな。俺、 loop.0001 絡まって、絞めて、閉めて その日俺は二度と引き返せない一線を踏みにじって消し、理性と不安を押し殺して踏み込んだ。 今思えば、子供だったのだ。越えてしまったものを見たくなくて消した線。振り向かないんじゃない、振り向けないんだ。踏み込んだ先で踏み出すことも座り込むことも出来ずにただ突っ立っていた。そこまでして求めたものが温もりだったと言うのだから、俺は心底子供だったのだ。 「しゅうちゃん。」 後ろから声をかけられる、ピクリと肩が揺れてしまった。それでも背を向けたまま寝たふりを続ける。あまりの子供くささにぎりと下唇を噛みしめるけれど漫画みたいに血が出ることはなかった。 「ねぇ、しゅうちゃんたら」 ぎしりと揺れたベッド、肩に触れる腕には声色とは違和感のある力が込められている。強い大人の、力。ぐるりと90度回転させられて仰向けに転がると、目を開けるか開けないかのタイミングで唇に感触、そしてリップ音。 何度か味わったこの感触を俺は一言で嫌いだと切り捨てることができる。 「おはよ狸寝入りのしゅうちゃん。」 「………おはよう、ございます。」 「起こして、早々悪いんだけど、もう帰ってくる時間なの。ねぇ、今度いつこれる?」 起き上がった裸の上半身にきれいに伸びた爪先を持つ指が滑る。弄び、強請っているふりをする。 「いつでもいいです。」 「じゃあ、明日。」 「………明日って、」 「いつでもいいって言ったじゃん。」 ふくりと頬膨らます彼女にため息をひとつ。目を瞑り、息を止めて、唇を無理矢理押し当てた。愛おしいとは思わない。こんなのおかしいと言われればそこまでだ。俺だってすっきりしている訳ではない。 ただ縋ってくる手を拒み、そうしたことで彼女か離れてしまうのが怖い。捨てられたくない。居なくなられたら、俺はもう1度あの喪失感に耐えれるとは思えない。 恋愛と言うよりただの掴み合いだ。 手が離れれば最後なのだ。 「ふふふ、しゅうちゃん好きよ」 「明日は来れないので明後日来ます」 「明日、用事あったの?」 「そんな気がするだけです。」 「どういう意味?」 「あと、する気はないです。」 「……しゅうちゃんってさ、本当に中学生?ってくらい性欲ないよね。」 「そんなことないです、」「だって今日が初体験でしょ?気持ちよかったでしょ?もっとやりたいってならないの?」 「今は思ってません。」 「本当?」 「本当です。もう、帰ります。」 脱ぎ散らかした服をかき集めて身に纏っていく、服と自分の匂いに包まれて酷く安心したことにまた子供っぽさを感じてしまう。相手の服は下着以外脱ぎ散らかされたままだ。頭が痛い。 「しゅうちゃん。」 すぐ傍で呼ばれて振り向くと、首元にかぶりつかれる。 慌てて頭を引き離した。 「何してるんですか?」 「マーキング」 「困ります。」 「なんで?」 「学校とか、部活とか、」 「見られたく無い人でも?」 「……そんなこと、」 「浮気?」 「それはあなただ。」 「違います、不倫です。」 「……………帰ります。」 完璧に開き直られては、居たたまれない。こちらはまだ吹っ切っていないのだ。早く、帰りたい。早く、ここから離れたい。早く、この人の目の届かない所へ行きたい。玄関で見送る彼女に一礼して足早に去る。角を曲がり完璧に姿が見えなくなった所で走り出した。エレベーターなんて焦れったい物に乗っていられない。 あぁ、何をやってしまったんだ俺は、 階段を駆け下りてマンションのエントランスに転がり出る。こんな所にいるのを誰かに見られでもしたら、想像すらしたくない。息が苦しくて足元が崩れそうだ。まだあの目に見られているようで、逃げるようにエントランスを横切ろうとした時。 「豪炎寺!」 そう呼ばれて、俺は血が落ちていくのを感じた。諦めたように足を止める。勝手に頭が回りはじめる。呆れきった親の目や軽蔑の眼差しを向けるチームメイト達、裁判まで考えて頭を振る。考えすぎだ。振り向く。 「よお、こんなとこで何してんの?」 「ちょっとな、知り合いがここに住んでいるんだ。」 「へー、俺もここなんだ。」 「そっか知らなかったよ。」 (嘘つけ、) 「今日、部活は?」 「自由練の日だから、」 (今まで休んだことないよな、) 「豪炎寺でもサッカーから離れたりするんだな。」 「お前こそ塾は?休みか?」 (逃げた。) 「いや、今日は休館日、」 「へー、そんなんあるんだな」 (知ってただろ、) 「母さんがさ、うるさいんだ」 「は?」 ぎくりと体中が震えた。しゅんと少し困った顔のこの男を蹴飛ばして逃げたくてたまらない。心の中の冷えて強がりな自分ですら黙り込む。頭が真っ白になる。ふらつく足をなんとか踏みしばった。死ぬ気で冷静さを取り戻そう回しすぎた頭から湯気がでそうだ。 「家だと母さんがうるさくって勉強出来ない」 「………そんなことないだろ」 「大ありだよ、困るんだ。」 はははと笑う。なんとなく半田に似ていると思った。あいつはもっと気のいいやつだけど。オーバーヒート仕掛けた脳に涼しい風が吹く。 「でも母親なんだ、大切にしろよ」 どこか鼻につくような、そんな声が出た。 「……?わ、わかってるよ。」 「なら、いいんだ。」 「豪炎寺?大丈夫か?」 「何の話だ?じゃあ、もう帰るよ」 「………おうっまたな」 幾分か冷静な頭で踵を返した。心臓も脳も落ち着くどころか冷め切っている。母さんがうるさくて、か。確かにあの母親ならそうなるかもな。何を焦っていたのだろう。何を、期待して待っていたのだろう。そこにあるものは何も変わらない。母親を求めた中学生と家族と愛を求めた女のちょっとした会合があっただけじゃないか。 振り返り、悠長にエレベーターを待つ同級生に告げる。 なぁ、ごめんな。 俺あんたの母親とセックスしたよ。 ∴≒#*$∵ 人妻に骨抜きにされる豪炎寺くん可愛いよね?ね?から始まった妄想。続きまする。 20110912(!)とこは → |