※捏造ばりばり
※雪村くんがちょっと怖い






「考えなくても、吹雪先輩って大人なんですよね。」
「…どうしたんだい?雪村?」



少し口角をひくりとさせながら参った表情を作る吹雪先輩と身体を向き合せる。
そのまんまの意味だった。



「吹雪先輩は分け隔て無く接してくれるから、10歳も離れてる実感が全くわかないんです。」



空気を和ますように微笑しながらそう言うと、やっぱり参ったように吹雪先輩はあーあと呟き身体を傾かせた。とすんとすぐ後ろの壁が彼を支える。



「僕、全く成長して無いや」
「そんなこと無いですよ。ほら、10年前の写真と比べても全然!」



しゅんと天井を見つめる吹雪先輩に慌ててアルバムを持ち寄る。見た目通り(と前に言ったら頭を小突かれた)ずぼらな吹雪先輩の数少ない整頓された持ち物であるこれは俺が昔話を強請る度に顔を見せた。最初は触ることすら躊躇ったアルバムも今では吹雪先輩に許可さえ貰えば勝手に眺めることすら出来る。慣れとは恐ろしいものだ。




「見た目の話じゃないよ。」
「それは、わかってます。」



へらっと笑ったその表情も写真の中で見たことがある。
吹雪先輩のことは何でも知っている。今教えてくれているエターナルブリザードがアツヤ先輩の技だとかたくさん。吹雪先輩とアツヤ先輩の話に始まり、エイリア戦、揺れた先輩を助けてくれた雷門中の皆さんのこと、日本代表に選ばれアジア予選で離脱、世界大会で復活したこと、その時の怪我が今だに時々疼くこと。吹雪先輩は俺が知りたいと言ったこと全てを話してくれた。だから吹雪先輩が成長してないことなんて無い。 


「雪村?」
「いえ、何でもないです」



写真と見比べて改めて思う。佇まいとか笑い方とか変わらない部分を覆う何かが凄く大人になったんだ。写真の中の彼は今よりずっと無防備で柔らかそうだった。



「お茶が冷えちゃったね、入れ替えてくるよ。」
「あ、はい。ありがとうございます」



アルバムを開いたまま席を外した吹雪先輩に黙って、写真に触れてみる。初めてのことではない、ただ14歳のあの人に触れてみたかった。つるりと滑るそこに手を入れてするんと中に入れたらいいのにと何度も思った。無防備な頬に触れ柔らかい手を握り、あぁ、揺れたあなたを助けた人の1人になりたかった。同じフィールドを駆けた人の1人になりたかった。吹雪先輩の口からもっと親しげに俺の名前が呼ばれるのを聞いてみたかった。



10歳も年上の実感が湧かない。
湧かない、湧かないさ。だって俺は吹雪先輩といつも一緒に居たい。湧かれちゃ困る、遥か遠い事を知ってはいけない。吹雪先輩の10年を否定してるわけじゃない、とんでもない。ただ、吹雪先輩が過ごした最高級の過去の中に俺が存在しないのが悔しいだけ。
だって俺は確かにこの世にいたんだ。 


吹雪先輩、アツヤって誰ですか。泣くほど好きな人ですか、その人はどんな声で先輩を呼び、どんな柔らかさで触れましたか。吹雪先輩、エターナルブリザードは俺が撃っていい技なんですか。アツヤ先輩はそれを納得しますか。吹雪先輩は、エターナルブリザードの先に誰を見ていますか、完成することを心から望んでいますか。完成されたエターナルブリザードを見て、また泣いたりしませんか。俺はアツヤ先輩にはなれません。
俺は雪村豹牙です。



吹雪先輩、円堂守のことキャプテンって呼ぶのいつからやめたんですか。少なくともこうして俺と会う時はキャプテンと呼んでいたじゃないですか。何故、キャプテンじゃ駄目なんですか、何故、円堂くんじゃ駄目なんですか。そんな寂しそうにキャプテンなんて言わないでください。写真の中みたいに大きな口でキャプテンと叫んでくださいよ。あなたはこの写真を大口あけて恥ずかしいと言ったけれど捨てないで取ってあるのは、自分の口から溢れるキャプテンのリズムが捨てられないからじゃないんですか。



吹雪先輩、染岡さんって格好良いですね。酷く優しくって貧乏籤引きそうな顔してますよね。基山さんはイケメンですよね、河童を信じてるちょっと変な子って言ってたけど、今でもしょっちゅう連絡取り合ってるの知ってるんですよ。



吹雪先輩、どうして豪炎寺修也の話をする時、一呼吸置くんですか。俺の聞いたことだけじゃなく、みなさんの話はたくさん出てきたのに豪炎寺修也だけどうして口を噤みたがるんですか。
豪炎寺修也が写る写真を見ながらよくお腹を撫でていることに気付いていますか。写真と変わらない大きな瞳が揺れ惑うことをわかっていますか。仲間には向けない何かを発していることを知っていますか。泣きそうなのに1番優しい手つきて写真を撫でるのはどうしてですか。吹雪先輩、成長できないのは誰のせいなんですか。



10年前に俺が居たら、全てわかったのでしょうか。教えてもらわずとも俺自身が吹雪先輩を読み解くことが出来たのでしょうか。吹雪先輩、そんなに過去が愛おしいならと俺一緒にタイムスリップしましょうよ。



吹雪先輩のことなら何でも知ってる。楽しかった10年前をあの人は何でも話してくれた。豪炎寺修也のことだって一拍置いて話してくれた。



「雪村、お待たせ」
「おかえりなさい吹雪先輩」



吹雪コーチ、この前仕事を休んで一週間もどこに行ってたんですか。誰に会ってたんですか。どうして帰ってきてすぐにエターナルブリザードを俺に教えようと思ったんですか。あなたは誰に向かってこの技を撃って欲しいんですか、誰に見せたいんですか。
お腹が痛そうですね、大丈夫ですか。
さっきも聞きましたが、エターナルブリザードは本当に俺が撃っていいんですか。



吹雪先輩、アルバムを見ながら10年前を思い出しながら、愛おしそうな顔しないでください。成長してしまった自分を悔やまないでください。誰が吹雪先輩の非成長を望んでいると言うのですか。吹雪先輩タイムスリップしたいなんて思わないでください。もしするなら俺も連れて行ってください。過去を夢見ないでください。俺はここに居ます。



吹雪先輩、あなたが好きです。
無防備じゃなくても、柔らかくなくてもあなたが好きです。何でも知ってると思わせてください。分け隔て無いあなたの特別枠だと思わせてください。吹雪先輩の今をどうか愛させてください、目を閉じないでください。
あなたが好きです。



「吹雪先輩、」
「何だい?」
「何でもないです。」
「今日はちょっと変だね。」



変ですか、そうですか。そんなつもりはなかったのに、あぁ、もしかしたら成長したのかもしれません。



過去を抱きたがるあなたへ
それでも前に進もうとするのは10年前から先輩に染み付いた癖みたいな物で、今と過去に捕らわれていてください。立ち往生していてください。その間に俺が吹雪先輩の隣に行きます。手を引きます。




∴≒#*$∵



すっごい雰囲気…!あと想像以上に豪吹要素なかったw雪吹うまいです豪吹前提で(^O^)言いたいこと詰め込んだけどまだ…足りない…だと

ついったで見たいと言ってくれた、
ほたるちゃんと香さんに捧げます


20111106(!)とこは