「・・・なぁ、サッチ。俺、コレで良かったんだよな?」
「何が?」
「■■■のこと」
「・・・あぁ、あの子」
サッチはタバコに火を点ける
「お前が良いって云うんだったら、それで良いんじゃねぇの?」
「そっか・・・」
サッチが吐き出す煙をぼんやりと見つめて呟くと、また視線が足元に落ちる
「なぁ、サッチ・・・俺、ホント、サイテーだ」
「何が?どう最低なの?」
お兄さんに話してご覧なさい?とニンマリ笑う
「俺、昔、■■■のこと、フッってんだ」
「へぇ」
「でも、直接云ってねぇんだ・・・男友達との会話、聞かれてたんだ」
「ふ〜ん」
サッチは何か助言するワケでもなく、ただ、エースの話を聞いていた
「アイツと同じ高校に行くって聞いて、ちょっと焦ったけど、クラスも一緒になる確率も低いだろうって思ってたんだ。そしたら・・・」
「今年、一緒になっちゃったねぇ」
「中学ん時、手紙貰って、それ友達に見られて・・・冷やかされたから“■■■なんて好きじゃねぇ。迷惑だ”って云ったの聞かれてたって考えると、生きた心地がしなかった」
「そんなこと云っちゃったんだ?」
「・・・うん。でも、アイツは違ったんだ。俺のこと、真っ直ぐ見つめて笑ってんだよ」
「へぇ・・・」
「俺、責められてる気がして、ずっと苦しかった。アイツが笑うたびに、話し掛けるたびに・・・席が前後になった時、終わったって思った」
エースは俯いたまま、顔を上げられずにいた
「だから、ローに・・・アイツなら■■■のこと、大事にしてくれんじゃねぇかな?って、勝手に理由付けて押し付けてきた」
「うわ、サイテー」
「そうだよ。だって、アイツが今までに告白されてんのも知ってんだぜ?なのに、誰とも付き合わねぇし、俺とは普通に話してくれるし・・・」
「だから、その男に■■■ちゃんを託したの?」
モワッと煙草の煙を輪にしながら、エースを見る
「そんなカッコいいモンじゃねぇよ・・・俺が、アイツから逃げたかったんだ」
「ホントに?」
「あぁ」
「ホントにホント?」
「しつこいぞ、サッチ」
漸く顔を上げ、サッチを睨むとサッチは真顔だった
「・・・なんだよ」
「エースの気持ち、ホントはどうなの?」
「え?」
「“■■■なんて好きじゃねぇ。迷惑だ”って、あの時は冷やかされて云っちゃったかも知れないけど、それ、エースの本心だったの?ホントに迷惑だったの?」
「・・・ッ」
「俺、この経緯を最初から聞いたの初めてだし、よく分かってねぇ。でも、3年になったお前が話す内容の半分以上が■■■ちゃんの事で、それだけを考えても、お前って好きなんじゃん?その子のこと 」
「好き・・・?俺が?■■■を・・・?」
サッチに云われて考えた
「俺、■■■のこと・・・好き、なのか?」
「じゃない?」
サッチがドヤ顔でウインクをする
「俺、行って来る!!」
「どこに?」
「アイツんトコ!!」
「そうか。気を付けて行けよ?」
「サッチ」
「ん?」
「ありがと!」
「可愛い弟のためさ!」
エースは、そのまま走ってサッチの家を出て行った
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