短篇 | ナノ

ルフィ


「○○○ーッ!!」

「あ、ルフィーッ!!」


19時に境内で待ち合わせ

それだけのメールが来て、とりあえず夏祭りのお誘いって事だけは分かった


「やっぱりお前、浴衣だったんだな?」

「夏祭りだろうなって思ったから。ルフィこそ珍しいね?浴衣だ・・・甚平じゃないんだね?」

「あ、コレか?俺は甚平が良かったんだけどよ?エースが“○○○ちゃんは絶対ぇ浴衣だから”って云うしよ。サボは“甚平より浴衣だよ”って云うから」

「(エースさん、サボさん、ありがとうございます!!)」


2人の兄に心から感謝する○○○


「俺、腹減ったぞ〜・・・」

「なに食べる?」

「ん〜・・・焼きそば、お好み焼き、フランクフルト、リンゴあめ、チョコバナナ・・・」

「ちょっと待った!そんなに食べられないし、小遣い足りなくなっちゃうじゃない!!」

「そうなんだよ・・・エースの奴、1,000円しかくれなかったんだぜ?」

「充分だと思うよ?」


高校生なら、このくらいが妥当だろう


「とりあえず、屋台を一通り見てから食べたいの決めたら?」

「そうだな。そうすっか!!」


屋台を端から端まで見て、目星を付ける事にした


「○○○」

「なに?」

「ん」

「?」

「んッ!!」

「どうしたの?」


珍しく口をへの字に曲げ、拗ねた顔をする


手ッ!


目線を少し下げると、ルフィの手が差し出されていた


「あ、あぁ・・・ゴメン、気付かなかった」

「んだよ」


ムスッとしながらも、○○○の手を繋ぎ少し前を歩く


おぉおおおおッ!!

「どうしたの・・・って、うわッ!!」


浴衣に下駄という格好にも関わらず、ルフィが何かを見つけたらしく激走する


「○○○、コレ、良いなッ!!」


目を輝かせて見ているもの、それはお面だった


「ルフィ、コレ・・・食べ物じゃないよ?」

「良いッ!コレ、買うぞ!!」

「いや、ルフィのお小遣いだから構わないけど・・・良いの?」

「うんッ!!」

「どれ買うつもりなの?」

「コレ!コレ買うぞ!!」


手にしているモノは、どう頑張っても素敵なお面じゃなかった


「それ・・・どっかの民族衣装の一部みたいだけど?」

「コレ、カッコいいッ!!」


聞く耳持たず

おっちゃんからお面を受け取ると、早速、頭に付ける


「ニシシシシ!おッ宝ぁ〜♪」

「残り500円、どうするの?」

「ん〜・・・」


宛てもなく屋台を見て歩くと、遂に最後の屋台の所まで来てしまった


「あ、これ、やる」

「え?」

「だから、やる」

「・・・ありがと」


掌に出された物を見て、ルフィの顔を見るといつもの笑顔が目の前にあった


ダサくても
カッコいいお面



― その日の夜 ―


「ルフィ、それって・・・」

「何だよ、エース」

「プロポーズなんじゃないか?」

「プロポーズぅううう?なに云ってんだ?サボ」

「○○○ちゃんに出店の物とは云え、500円とは云え、指輪買ってやるとか・・・」

「どう考えても、そう思っちゃうだろ?」

「そうなのか!?・・・ま、いっか」

「良いのかよ。まぁ、お前が良いなら良いけどな?」

「ルフィ、おめでと」

「ニシシシシシッ」


END

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