短篇 | ナノ

苦労人


「おい」

「どうした、頭・・・」

拾って来た

「・・・人間をか?」

「そこの海に浮かんでた」

「・・・生きてんのか、それ」

「一応、息してんぞ?」


レッドフォース号の船長・シャンクスは、たまに何かを拾ってくる

犬、猫はもちろん、時にはワケの分からないモノも紛れている


「・・・ぅ、ん・・・」

「お?」

「おい、大丈夫か?」

「・・・ここは?」

「レッドフォース号だ」

「レッド・・・フォース?」


頭の拾ってきたもの、それは人間(女)

医務室で手当てをしていたが、ようやく目を覚ました


「おい、お前、何で海に浮かんでたんだ?」

「・・・海に、浮かんでた?」


シャンクスに問われても、女はよく分かっていない


「頭がお前を拾ってきたんだが、海に浮かんでいたらしいぞ?」

「私・・・さっきまで家に居た筈なのに」

「・・・家?」

「ハイ。何か、仕事に行こうとして玄関を出たんです。そして、階段を降りようとしたら、突然周りが光り出して・・・」

「気付いたら、こんな感じか・・・」

「ハイ。あの、ココはどこですか?」

「偉大なる航路だ」

「グラン・・・え?」


女は、偉大なる航路という単語を初めて聞いたような顔をしている


「お前、名前は?」

「○○○・・・■■■○○○です」

「俺はベン・ベックマンだ」

「あの、ココ、まさか外国なんですか?」

「外国・・・?お前、どこから来たんだ?」

「私は、日本から来ました。まさか外国に来ちゃったのかな・・・」


女は顔を両手で覆い、絶望している


「俺はこの船の船長のシャンクスだ。お前の町、云ってくれよ、送ってくぞ」

「本当ですか?ありがとうございます!シャンクスさん!」

「頭、にほんって場所、知ってるのか?」

全く知らん!だが、何とかなるだろ!

「ベンさん、私、帰れますかねぇ・・・?」

「いや、明確には云えないな・・・」


ベンと○○○は絶望した





― 1ヶ月後 ―


「とりあえず、私は異世界の人間って事なんですね?」

「そうらしいな?」

「異世界から来たのか、面白いなぁ」

「全然面白くないんですけど・・・あの、シャンクスさん?」

「何だ?」

「私、このままだと自分の世界に帰れなそうなんですけど・・・」

「そうだな」


シャンクスは、あっさりと“いっそこの世界の人間になっちまえ”とニンマリしている


「いやですよ!・・・でもこのままじゃ、私まで賞金首!?ってか、海賊の仲間入り!?」

「安心しろ、○○○みたいに女を海賊にするつもりはねぇよ」


ベンがタバコを咥えながら、ニヤリと笑う


「つまんねぇな!ベンのヤツ」

「面白いだけで海賊は出来ねぇぞ、頭」

「分かってるって。もうすぐ、嵐がくるぞ。○○○、中に入ってろ」

「あ、ハイ」


結局、私が元の世界に戻れたのは、この世界に着いてから10年後だった・・・


END

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