短篇 | ナノ

シャンクス


此処は冬島

気温なんて分からない・・・


ぶぇっくしょーいッ!!


ただ、寒い事だけは分かる


「オイオイ、随分と色気のないクシャミだな?」


レッドフォース号の船長は大口を開けて笑っている


「そんなこと云ったって、出るモンは出るんですよ」


○○○はプクーっと頬を膨らませる


「全くだ・・・冬島だってのに、つっかけで出歩くアンタの気が知れねぇ」

「ですよねー?信じらんない、船長」


白い溜息を吐きながら甲板に出て来たのは、副船長のベン・ベックマン


「そうか?俺は、もっと寒いトコ行ったことあるから、フツ―だぜ?」

「信じらんないッ!!」

「確かに、あそこは寒かったな・・・」


ベンがタバコに火を点けながら、思い出にふける


「ココでも十分寒いですよ?」


○○○は“もっと厚着すれば良かった・・・”なんて云いながら、甲板から見える冬島を眺めている


「○○○、風邪ひく前に部屋に戻れよ?」

「はい・・・」

「ま、俺は戻るからな?」


ベンに促されるも振り返らずに、ただ降る雪を見上げる○○○


「おーい」

「あ、船長」


シャンクスに呼ばれ、振り返る


「ほれ、雪ウサギ」


○○○の前に、ズイっと差し出されたのは甲板に積もった雪で作られた雪ウサギ


「ぁ・・・可愛い」

「○○○、雪、初めてだろ?」

「あ、はい。でも、何で知ってるんですか?」


確かに雪は初めて見る

しかし、シャンクスはおろかレッドフォース号の誰にも云った事はなかった


「だって、○○○がこの船に乗って初めて来るだろ?冬島」

「だとしても、私が冬島出身だったらどうするんですか?」

「いや、それはない」

「・・・何で、ですか?」


○○○は首を傾げた





シャンクスは云い切った


「勘ですか・・・何だ、船長、勘ですか」


○○○はガックリと肩を落としながら、再び冬島を見つめる


「そんな怒んなよ?」

「怒ってませんよ?」

「じゃあ、拗ねんなよ」

「拗ねてもいませんよ」


○○○とシャンクスの会話は平行線を辿る


「ちゃんと知ってるぞ?」

「何をですか?」


シャンクスの方へ向き直る○○○


「お前が春島の出身だって事」

「・・・知ってたんですか?」

「当たり前だ、お前はこの船の仲間だぞ?」


“知らないでどうする?”と二カッと笑うシャンクス


「・・・そうですか」

「何だよ、ツレねぇな?」

「そ、そんなこと・・・ハックショイ!!」

「うわッ、キッタね!」


ダハハと笑いながら避けるシャンクス


「さっさと中に戻るぞ?」

「そうですね、寒すぎて耳の感覚もありません」

「そうなのか?」

「ハイ。ジンジンしてます」


そう云うと○○○は、中へ戻ろうと踵を返した


「・・・」

「船長?先、戻りますよ?」


シャンクスは少し考えて、行動を移す


「○○○」

「何ですか?」


○○○が振り返ろうとした瞬間に、事件は起きた


アムッ!!


「#$%&△■○×@*!〒?」

「何だよ、感覚あるんじゃねぇかよ・・・」


シャンクスの懐に収められ、耳を甘噛みされた


アマ



「な、な、な・・・何するんですかぁああああ!?」

「耳の感覚がないって云うから、噛んでみた」

「か、噛んでみたって・・・何してんですか!?」

「何って・・・甘噛み?」


シャンクスは首を傾げる


「アンタは何してんだよ」


ゴンッ!!


「アダッ!?・・・べ、ベン!?」

「大事なクルーにセクハラしてんじゃねぇよ、頭」

「た、助かりました」

「何でだよ?良いじゃねぇか、愛情表現だよ!!」

「アンタの愛情表現は、どっかズレてるぞ?」

「・・・愛情表現、だったんですか?」

「あぁ、そうだ」


END

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