短篇 | ナノ

サッチ


おれは今、めっちゃ悔しい

例えるなら、サバンナで必死に追い詰めてハントした獲物を誰かに横取りされるって心境に似ている悔しさ

おれの気持ち、伝わります?


「ほら、口開けろ!」

「うるせぇよ!何でそうなるんだよ!?」

「あぁん?テメェ、それじゃどうやって飯食うんだよ?利き手使えねぇだろ?足で食う気か?」

「……わーったよ!」


嫉妬で人が殺せるなら、おれは今、エースを殺せると思う


「ほら、あーんしろ!ったく…どうやったら、そんな怪我すんだよ!?」

「うるへぇ!おれふぁな、逃げるってのふぁしねぇんだよ」

「食いながら喋んな、バカ!」


○○○がエースに、いわゆる“あーん”をした

仕方ないのは分かってる

エース、利き腕怪我してるモン

でもね?でもですよ?

左手で食えや!!

スプーンでもフォークでも使って、最悪手掴みででも左手で食えるだろ!?


「サッチ、泣いちゃう…」

「やめろよい」

「マルコ!?いつから居た?」

「今しがた通り掛かっただけだよい…」


面倒臭そうにサッチを見つめるマルコ


「そんなに羨ましいなら、“おれにもあーんしてくれ”って頼めよい」

「 それ出来てたらココに居ないよ 」

「……だな」


それ出来たら、こんな事になってないし


「お前も大変だねぇ」

「何が?」

「○○○。前に“付き合って”って云ったら、夏島で買い物に“付き合ってくれた”だろい?」

「 心の傷、抉らないでよ 」

「難儀なこったよい。ま、せいぜい、エースに嫉妬してれば良いよい」


そう云うと、手をフリフリしながら立ち去って行くマルコ


「え、エースに嫉妬、って…」


いや、まぁ、確かに嫉妬してるけどさ?


って、オイコラ、そこのパイナップル!


何、どさくさに紛れて、お前まで“あーん”して貰ってんの!?

しかも、何かこっち見てる…

んでもって、ニヤリとしやがった


「あったまきた…」


おれ、今ならあの不死鳥に勝てる気がする(※気がするだけです)


「っつーか、マルコ、何でお前まで」

「ダメかよい」

「いや、別に?1人も2人も変わんねぇから」


○○○にとっては、ただの食事介助のようだ


「マルコ、通りすがりに飯盗るなよ」

「一口くらいケチケチすんなよい」

「撫でんなッ!この、パイナップル!!」

「うっせーよい!クソガキ!」

エースはムスッとしているが、マルコは頭をグリグリ撫でて立ち去る


「……で?そこのフランスパンは何してんの?」


○○○が食堂の隅でどんよりとしているサッチを見つける


はい、あ~ん



「なぁ、おれにも“あーん”してくれよ!」

「…何で?」

「サッチ、お前までおれの飯盗る気かよ!」

「だって、さっきマルコにはしてたじゃん!」

「してたな?」

「じゃ、おれにも!」

「お前、健康優良児だろ?マルコはああ見えて怪我人だっつーの!!」

「えぇええええ!?」


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