短篇 | ナノ

ベックマン


『もう別れよう』

「そんな・・・どうして?」

『お前さ、重いんだよね。俺、お前みたいなのダメなんだわ』

「・・・そっか。じゃあ仕方ないなぁ、うん。分かった」

『それだよ』

「え?」

『“私、あなたのこと分かってます”みたいな態度。それがダメなんだよ』

「・・・そっか」


もう、どうする事も出来ない

だって、泣いて縋ってもこの人は戻って来てはくれないのだから

ならば、受け入れるしかないではないか・・・


『お前イイ奴だし、俺なんかよりきっとイイ男見つかるって。じゃあな!』

「そっか・・・」


去って行く元彼の背を見つめるしか出来なかった

そして、元彼の乗る車には可愛らしい女の子が乗っていた


「ハハ・・・こればっかりはどうにも出来ないじゃん・・・ッ・・・!」


その場にしゃがみ込んで頭を抱える


「呼び出したクセに、置いて帰るなよぉ・・・そんなに、強くないんだぞぉお・・・」


我慢していた涙が溢れて止まらない


「・・・・・・」

「ヒック・・・ぅう・・・ッ」

「・・・おい」

「ふぇ?」


声に反応し見上げると、厳つい男が立っていた


「こんな所で何してる?」

「あ・・・あぁ・・・うわぁあああああああーんッ!」

「なッ!?」


この男を見て、何故か堰き止められていた物が更に決壊した


「おれを見て大声上げて泣くな」

「だって・・・だってぇえええッ!!」


見ず知らずの男を前に、子供のように泣いた


「わだじ、ぞんなにづよぐないもぉおおんッ!!」

「!?」


聞こえる言葉には全て濁音が付いていただろう


「・・・で?ココでフラれて置いてかれたのか?」

「はい・・・グスン」

「お前・・・帰れるのか?

「帰れます・・・ご迷惑お掛けしました」


ペコリと頭を下げて駅へ向かう


「オイ」

「・・・ハイ?」

今日のは誰も見てねぇからな


厳つい男はニヤリと笑って見送ってくれた


だけがていた



「ありがとうございました!・・・あの!お名前は?」


この出会いもきっと何かの縁


「ベン・ベックマンだ」

「私、○○○って云います!」

「そうか。気を付けて帰れよ?」

「ハーイ!」


大きく手を振り別れを告げる


END

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