短篇 | ナノ

マルコ


「マルコ、もう良いよ・・・」

「・・・・・・」

「こんなトコ、見られたく・・・ないんだ」

「○○○・・・」


告げる言葉は弱々しく、波の音に掻き消されてしまいそうだ


「ねぇ、マルコ」

「ん?」

「笑って・・・?」


腕に抱かれ、呼吸もままならない状態の○○○はマルコを見つめ微笑む


「良いんだよ・・・だって、海賊だよ?私達」

「けど」

「ちゃんと、モビー・・・守ったよ?」

「あぁ」

「誉めてよ・・・1番隊 隊長」

「・・・」


隊長格の多くが不在の時を狙われたのか、モビーが奇襲された

○○○は戦闘員ではない

モビーに乗船しているとは云え、いくらなんでも戦闘要員ではない人間は巻き込まれたら最期だ


「よく・・・やった、よい」

「ふふ・・・誉められた・・・」


最期に褒めて貰えて良かった、○○○は誇らしげに呟く


これからもいくらでも誉めてやるよいッ!だから・・・死ぬなッ!


○○○を強く抱きしめる


「ありがと・・・でもさ、無理、みたい」

「○○○・・・ッ」


○○○の頬に一滴、涙が落ちたのを見て自分が泣いていると気付いた


「笑って?・・・マルコの笑った顔、好きだよ?」

「・・・ッ・・・こうか?」


乱暴に涙を拭きながら、○○○に向かって微笑む

きっと長くは持たないと自分でも分かっていたマルコは、○○○の願いを受け入れる


「うん・・・すっごく、男前・・・ッ、惚れた」


マルコの頬に手を伸ばしたが、届く事はなく地面に落ちた


「○○○ッ・・・惚れた男置いて、どこ行くんだよい・・・目ぇ、開けろ・・・」


何度呼びかけても、閉じた目が開かれる事はなかった


の音をきながら



「良いのか?マルコ」

「あぁ・・・」


○○○は水葬する事にした


「○○○・・・向こうで待ってろ、必ず迎えに行くよい・・・」


そう云うと、○○○に付けられていたネックレスを外し、代わりに左手の薬指へ指輪をはめる


「またな・・・行ってくるよい」


さよならは云わない

代わりに笑顔で云おう、行ってきますと


END

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