短篇 | ナノ

E


「おい、診療室開けろ!急患だ!」


船に戻るとすぐに治療を始めた

○○○の視神経は既に限界だった

もし、あと2〜3回衝撃を受けたら視力回復は危険だと判断していた

だが、今日の事を考えると最後の賭けだ


「手術だ」

「お、オペ!?今から!?」


ペンギン達も驚いた

突然女を担いで戻ってきて、いきなり手術だと云うんだからな

そりゃ驚くだろう


「良いから、早くしろ」

「は、ハイ!」


視神経を繋ぐ手術は数時間を要した

正直、治る確率は低い




*****

「包帯、取るぞ」


手術から数日

巻かれた包帯を解いていく


「ゆっくり目を開けろ」


どうか、見えていてくれ

珍しく神というモノに祈った


「・・・キャプテン、ありがとう」

「見えるのか?」


静かに首を横に振った○○○


「・・・そうか」

「でも、治そうとしてくれた。私はそれだけで十分だよ」


見えるかも知れない、ほのかに期待していたのは○○○もだった


「もっと・・・いろいろ、見てみたかったな」


俯き、涙がポタポタと掌に落ちた


「・・・見せてやる」

「え?」

「おれがお前に世界を見せてやる」

「・・・キャプテン?」


せめて、左目でだけでも世界を見せてやりたい

純粋にそう思った


「お前の見たかった世界、おれが見せてやる。拒否権はねぇ・・・何故なら、おれは海賊だ。おれのやりたいようにやる。嫌だといっても、おれはお前を誘拐してでも連れてくからな」

「・・・うん。連れてって、私も」


今まで見えていた世界は置いていけ

これからは、見たかった世界をみせてやる






「おい、紹介するぞ。新しいクルーの○○○だ」

「わーい、女の子だ♪宜しくね、○○○」

「キャプテン、良いんですか?」

「構わねぇ」

「女の子が1人いるだけで、この船がこんなに華やぐなんてなぁ〜」


口々に喜びの声を上げ、○○○を囲むように自己紹介をしている


「お前ら、早く持ち場に戻りやがれ!」

「キャプテン、ヤキモチはダメだよ?」

「・・・チッ、ヤキモチじゃねぇ」

「ホント?ま、良いか」


ベポが不思議そうに首を傾げながら、持ち場に戻る


「キャプテン」

「何だ?」

「宜しくお願いしますッ!!」


深々と頭を下げる○○○


「あぁ、宜しくな?」


END

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