短篇 | ナノ

A


「・・・ッと、ゴメンなさい」

「・・・気を付けろ」

「すみませんでした。お怪我は?」

「ない」

「良かった。では・・・」


初めて会ったのは、町に行ったとき

目の前に人が居るって気付かなくて、そのままぶつかってしまった

私は、よく人にぶつかるから大丈夫だが

ぶつかられた方はたまったもんじゃない


「・・・おい、ちょっと待て」


男性が声を掛けても、自分が呼び止められているんだと気付かなかった


「おい、待てと云っている!」

「あ、私でしたか!?」

「他に誰が居る・・・」

「・・・すみません」

「いや、良い。お前、その眼帯はどうしたんだ?」


男性が私を呼び止めると、右目の眼帯を指摘してきた


「・・・コレですか?ちょっと・・・」

「診せてみろ」

「え・・・?」

「おれは医者だ」

「いえ、大丈夫です。私、お金ないから」

「構わねぇ。診せてみろ」


そう云われて、男性に手を引かれて暫く歩いた


「あ、あの!どこに行くんですか?」

「おれの船だ」

「ふ、船!?」

「おれは医者だ。しかも海賊だ」

「か、海賊!?い、良いです!結構です!!」


引かれた手を振り解こうとするが、敵わない


「黙ってろ。診るだけだ。何も盗らねぇし、殺しもしねぇ」

「・・・・・・」


そう云われると、どうにも出来ないと分かったのかそのままついて行く事にした


「入れ」

「はい」


椅子に座り、ライトを当てられながら右目を診て貰う


「おい、お前・・・」

「はい」

「いつからだ?」

「え?」

「この右目、いつからだ?」

「えっと・・・1年、くらい」

「チッ」


舌打ちッ!?どうして!?私、何かしましたか!?


「どうしてこうなった?」

「・・・・・・ちょっと」

「ちょっとどうしたんだ」

「ぶ、ぶつけたの」

「ぶつけた?どこに、どうやって」

「えっと・・・タンスに。転んでぶつけたの」

「・・・そうか。お前、名前は?」

「え?」

「カルテを作る。名前が必要だ」

「・・・○○○」

「明後日も、ここに来い」

「何で?」

「お前は患者だ。次の診察が明後日だと云っているんだ」

「だから、私、お金ないから・・・ムリだよ」


お金があったら、きっとこの目も医者に診て貰えていた


「金は要らねぇって云っただろ」

「でも!タダで診て貰うなんて・・・」

「良いから、お前は黙って診療を受ければいいんだ」

「・・・分かりました」


男性に云われ、診療を受ける事にした

この右目が治るんなら、こんなにありがたい事はない


「おれは、トラファルガー・ロー。医者だ」

「宜しくお願いします。先生」

「先生?」

「だって、お医者様なんでしょ?」

「・・・キャプテンと呼べ」

「何で?」

「ハートの海賊団のキャプテンだからな、おれは」


そう云えば、海賊だって云ってたな・・・

それから、2〜3回ほどキャプテンの診療を受けた

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