短篇 | ナノ

マルコ


「せんせぇ、さよーならぁ」

「はい、さようなら。気を付けてね」


小さな手を身体いっぱい振って挨拶をする子供達


Turururururururu・・・


「もしもし、○○保育園です」


コールの相手は、園児の父親だ


「あ、はい。分かりました。お待ちしております」


受話器を置くと、エプロンの裾を引っ張られた


「どうしたの?」

「おとうしゃん、まだ?」


4歳児組の男の子

今さっき、電話で今から迎えに行くのでもう少し待って欲しいと連絡があった


「今ね、お父さん、お迎えに来るよ?だから、もう少し待ってようね?」

「・・・うん」

「それまで、先生と遊ぼうか?」

「・・・うん」

「何して遊ぶ?」

「かめんらいだーごっこ」

「分かった!」


男の子は父親が来るまでの間、私と遊ぶことを了承してくれた
















へぇーんしぃーんッ!!


意外とノリノリで遊んでいる


「出たな!ウィ●ード!!」


ノリノリにはノリノリで対抗だ


「とぉおおおりゃああああッ!!」

「ぐうぉああああああッ!!」


斬りかかられたんで、とりあえず死んでみた


「・・・・・・」

「・・・おとうしゃん!」

「へ?」


斬られたばかりなんで、倒れていた私は驚いて立ち上がる


「あ、お父さんですか!?」

「・・・あぁ」

「すみません。待っている間、遊んでいたんで・・・」

「おとうしゃん、せんせぇ、かいじんだったの!」

「そうかよい。楽しかったか?」

「うんッ!!」


父親の姿を見つけただけで、あんな満面の笑顔になる

一緒に遊んでいて笑っていても、あんな笑顔は見られなかった


「せんせぇ、さよおならぁ」

「はい、さようなら」

「遅くなってしまってすみませんでした。気を付けますんで」

「いえ、延長保育時間内でしたので大丈夫ですよ。では、お気を付けて」


父親は子供を抱っこすると、そのまま歩いて園を出て行った










「いっつもギリギリで迎えに来るんだよね、あそこん家」


同僚が、ギリギリは帰る時間が遅くなるから嫌だと嘆きながら呟く


「へぇ・・・でも、両親共働きなら仕方ないんじゃない?延長保育時間内だし」

「あ、あそこのお家、お父さんだけよ?確か」


同僚は宙を見ながら、思い出すように話す


「そうなんだ・・・離婚、とかかな?」


園児の家庭環境に興味を持つなんていけない事だが、何故か気になった


「確か・・・奥さんが交通事故か何かで亡くなってる筈よ?」

「え・・・」


シングルファーザーなのか


「お父さん、えっと・・・マルコさんって云ったかな?あの白ひげに勤めてるんだよ?」

「白ひげって、あの白ひげ?」

「そう、あの白ひげ。でも、何でこんな超庶民派保育園に通ってんのかなぁ?」

「私は好きよ?自分が通ってた保育園に似てるし・・・」


同僚が、白ひげならお高い幼稚園に入れるのにーとボヤいている


「すみませんね?超庶民派保育園で」

「「 え、園長ッ!? 」」


園長が若干涙目だったのはナイショだ


さん



- 次の日 -


「○○○せんせぇ、おはよぉごじゃます!」

「はい、おはようございます」


次々と登園する園児と母親達に挨拶をする


「せんせぇ!」


ひと際大きな声で呼ばれた


「ん?あ、おはようございます」

「・・・ぉ、はよごじゃあます」


ペコリと大きく頭を下げる園児


「“ごじゃあます”じゃねぇだろい?“ございます”だよい」

「ごじゃ、あ?」


父親を見上げる園児


「あ、おはようございます」

「あ、おはようございます・・・今日も、コイツを頼む、よい」

「(・・・よい?)あ、はい。分かりました」


園児を託されると、父親は頭をひと撫でして門へ向かう


おとうしゃんッ!!


園児が大きな声で父親を呼ぶ

呼ばれると振り返る父親


いってきましゅッ!!


大きな声で父親に“行ってらっしゃい”と手を振る


「・・・行ってらっしゃい、だよい」


困ったように笑う父親

何で父親が笑っているのか不思議な園児


「ま、マルコさん!行ってらっしゃい!」


思わず、自分も云ってしまった

父親はとても驚いていたが


「・・・行って来ます」


その後、雪崩れるような顔でそう云うと園を出て行った

自分でも、何で“行ってらっしゃい”と云ったのか分からないけど

きっと、頑張るお父さんを応援したいと思ったんだろう


END




*****
マルコは、シングルファーザーだと思うんです。
そして、コレ、本当はシリーズで描きたかった話を分解してみたんです。
あんまり名前変換なくてすみません。
そして、子供の扱いが“園児”ですみません。

多分、ヒロインちゃんはマルコに一目惚れだと思います←


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