B
「よし、今日は本部に居るのね・・・」
急いで自室へ向かおうとした、その時
「遅かったな?」
「ヒィッ!?」
「なぁにコソコソしてんだ?」
「い、居たの・・・?」
「居たよ?非番だもの」
「そ、そう・・・じゃ、私はコレで!!」
慌てて部屋に戻ろうとするが、そう簡単にはいかなかった
「■■■」
「ギャフンッ!!」
「どういうつもり?」
「どういうって・・・?」
「辞表、おつるさんに出したでしょ?」
男の手にあるのは、ついさっき、つるに提出して来た筈の辞表だった
「何でッ!?」
「こっちが聞いてんの。ちゃんと答えなさい」
「私は・・・海軍を辞めたの」
「あぁ〜コレね?」
男が辞表と■■■を交互に見やる
ビリッ、ビリッ・・・ビリッ!「な、何すんの!?」
「コレで話はおしまい。お前は海軍のままだから」
「どうして!?」
「辞めるなんて、どうして勝手に決めるんだよ」
「私は・・・海軍を辞めて世界を見に出たい」
「辞めなくても世界は見れる」
「違う!海軍側から見た世界だけじゃ、この世界は理解出来ない」
「お前が居た世界とは、基が違うだろうから仕方ないだろ?」
男は頭を掻きながら、大きく欠伸をする
「ちゃんと聞いて!私、空白の100年や歴史の本文にだって興味があるの!」
「おいおい・・・それ云っちゃう?」
「でも、古代文字なんて分からないし、きっと私には理解出来ないことばかりなんだと思うの」
「分かってんじゃない」
「でも!でも・・・行きたいの」
■■■は力なく俯き、呟く
「10年・・・いや、もっとだっけ?あぁ〜・・・忘れた」
「私も忘れた」
「お前がこっちに来てから、色々あった」
「うん。沢山あった」
「おれはお前を見て来たんだ、■■■」
「・・・感謝してる。でも、コレだけは譲れないの」
捕まれた腕を振り切り、自室に入る■■■
「あ、コラ!待ちなさい!!」
「私、この家・・・出るから」
「なに云ってんの?ダメでしょ、無理」
「私だってもう大人だよ?もう・・・面倒みて貰わなくても大丈夫だよ?」
「■■■・・・」
扉越しに聞こえる声が少しくぐもっていて、少しずつ遠く感じる
「さよなら、父さん」
「あ!■■■ッ!?」
「元気でねッ!!」
「コラ、待ちなさーい!!」
■■■の得意技、少しだけしんみりさせて逃げ出す作戦
「窓から出てくなんて、行儀悪いでしょ!?」
「そこなの!?」
「ちゃんと玄関から出て行きなさい!!」
「玄関から出て行ったら許してくれんの!?」
「・・・・・・いや、無理だわ」
「じゃ、このまま行くわ!!」
窓の傍にある木や枝を駆使して、自宅から逃げ出す■■■
「・・・面倒なことになっちまったな」
頭を掻きながら、自転車に跨り追い掛けることにした父親
「追い掛けてきたら、
嫌いになっちゃうから!! 」
「・・・嫌われたくないけど、居なくなる方が困るんだよな」
ココから■■■の冒険が始まり、父親との無限鬼ごっこが始まった
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