砂時計【マルコ】 | ナノ

第8話


泣きたいのに我慢をしたり

辛いのにそんな素振りも見せない

きっと、アンタはいろんな事を抱えている


「マルコさん、暑くない?」

「いや、大丈夫だよい」


今日もまた、彼女に車椅子を押されながら散歩をしていた

本当は、普段通りにおれの名前を呼びたいんだと思う

でも、おれがそれを我慢させているのだろう


「なぁ・・・」

「ん?」

「名前」

「名前?」

「良いよい、“マルコ”で」


その方が、おれも何か思い出せると思ったから


「分かった。今から、“マルコ”って呼ぶね?」


だから、私の事も“■■■”って呼び捨てで構わないから

そう云って笑った顔を、やはりおれは知っている

ポッカリと一部分だけ空いた所が、きっと■■■の居場所だったんだと思う・・・


「・・・おい?」


暫くして、車椅子が動かなくなり、呼び掛けても返事がないから振り返って見た


「・・・・・・ッ!」

「■■■ッ!?」

「ハァハァ、う・・・ッ、ぐ・・・」


■■■は、そのままその場にしゃがみ込んでしまった


「ぉ、おい、大丈夫かよい!?」


この感じを、おれは知っている


「マル、コ・・・痛ッ、く・・・」

「■■■ッ!!」


早く助けねぇと

助けねぇと、■■■が死んじまう


「誰かッ!!」


歩けない自分がもどかしい

おれは出来る限りの大声を上げた


誰かぁああッ!!

もう、何かを失うのはゴメンだよい


うモノ



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