砂時計【マルコ】 | ナノ

第5話


アンタはおれの何なんだ?

おれはアンタの何なんだ?

知らない方が良い事だったりするのかい・・・?


「マルコ、元気にしてた?」

「元気じゃねぇから入院してんだよい」


彼女が1日ぶりに病室へやってきた


「昨日は・・・どうしたんだよい」


自分があんな風に怒ったくせに、気まずくてぶっきらぼうに聞いてみた

すると、彼女は笑顔で答えてくれた


「昨日は用事があって来られなかったの。・・・まぁ、私には来て欲しくないかも知れないけど・・・」


そんな事を云わせたくて聞いたんじゃない


「そんな事ないよい。助かってるんだ、本当に。ありがとう・・・■■■、さん?」


ハッキリと思い出せていないのに彼女を呼び捨てにするのは失礼だと感じ、つい“さん”付けをした


「こちらこそ、ありがとう。マルコさん」


この時からだった

彼女がおれのことを、“マルコさん”と呼ぶようになったのは


「あ!そうだ、散歩に行かない?」

「散歩?」


彼女はおれを車椅子に乗せると、中庭へ散歩に出掛けた

中庭は、人も疎らで静かだった


「左足、不便でしょ?」

「ん・・・まぁ」


骨折しているのだから、不便に違いはない

しかし、大事なことを思い出せない方がより不便だと感じていた


「風、気持ちいいね?」


車椅子を停め、木々を見上げる彼女

振り返って見ると、新緑の葉の隙間から光が零れていた




「ココ、凄い綺麗だね?」

「走ると危ないよい」

「大丈夫だよ」

「そうか?    は危なっかしいんだよい」

「そんな事ないよ。マルコこそ、前ちゃんと見ないと危ないよ?」

「転ぶなよい」




まただ

綺麗な新緑の木々のトンネルを誰かと歩いている風景

でも、顔も名前も思い出せない

やっぱり、アンタが誰なのか思い出せないんだ・・・


他人



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