第4話
もしも、本当に私のことを忘れているなら、何も云わないことにしよう
だって、マルコが辛いだけだから・・・
『経過は良好ですね』
「ありがとうございます」
『でも、身体に負担が掛かるから、あまり無理はしないで下さいね』
「はい。ありがとうございました」
『それとマルコさんの事なんですが』
診察室を出ようと身支度を整えていると、先生に呼び止められた
『辛いだろうけど、ゆっくり待ってあげて下さい。一緒に頑張りましょう。きっと、元に戻れますから』
「はい」
診察室を出て、その足で屋上に昇った
沢山の洗濯物が風に揺れていた
「本当に・・・元に戻るのかな」
マルコがきちんと思い出してくれるまで、気長に待とうと思っている
しかし、気持ちは焦るばかりで
「もし・・・戻らなかった、ら?」
言い知れぬ恐怖に包まれているのも事実だった
「マルコ・・・」
ねぇ、もしも
もしもなんだけど、時間を戻せる砂時計があったら欲しいと思わない?
それなら、簡単にひっくり返して元に戻せるのに
マルコ?
私はあの日に戻りたいよ・・・
戻らない日々
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