砂時計【マルコ】 | ナノ

第2話


あれから何日か経ったが、相変わらず、彼女が誰なのかは分からないままだった

おれは一体なにを落として来たんだろうか?


「私の名前、ホントに分かんない?」

「分かんねぇよい」

「自分の名前は・・・分かるんだよね?」

「あぁ」

「・・・ッ、そっか」


ショックを隠し切れないといった彼女の顔を見て、少しだけ胸の奥が締め付けられるような感じがした


「すまない」


だからなのか、おれも謝ってしまった


「ううん。気にしないで」


彼女は俺が目を覚ました日から、毎日見舞いに来ては繰り返し尋ねていた


「本当に・・・顔も名前も、分からない?」


何だか急かされているような、責められているような感じがして苛々していた


分かんねぇモンは分かんねぇんだよい・・・

「そう・・・だよね。ゴメン・・・花瓶の水、替えてくるね」


そう云って病室を出て行った彼女は、泣きそうな顔をしていた


「・・・ッ、痛っ・・・!」


泣きそうな彼女の顔を見たら、突然、頭痛に襲われた


「・・・ッ、く・・・ッ」


前に、どこかで見たことがあるような気がしたけど、靄が掛かったようにハッキリとしない

おれは何を忘れてしまっているんだろう・・・?


き顔



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