第14話
ポッカリと開いた胸の穴
それは■■■のことだった
今、全て思い出したから、大きな声で君に伝えよう
コンコン・・・
「マルコ、おはよ」
「■■■、おはよう」
ノックの音だけで、誰が来たのかが分かる
■■■はまだ気付いていない
全て思い出したよい
そう伝えようとした矢先に、■■■に遮られてしまった
「あのさ」
「・・・何だよい」
「退院の話。先生、マルコには伝えてるって云ってたけど」
「退院?聞いてないよい」
ギプスも外れ、リハビリのみとなったおれは、もうすぐ退院なんだろうとは思っていた
「
明日だってさ 」
「
急すぎるだろよい! 」
あまりにも乱暴な話だ
いきなり帰れと云われても、困るよい
「2~3日前から決まってて、マルコに説明してるって云ってたよ?」
「云われてねぇよい・・・退院、か」
窓の外へ目をやると、新緑の季節も過ぎ去りすっかり秋の風景に移り替わろうとしていた
「もう・・・2ヶ月経ったんだね?」
目が覚めた時、おれの目の前には見知らぬ天井が広がっていた
「そうだねぃ」
2ヶ月もの間、■■■のことを忘れていたのか
「ねぇ、マルコ?もし、マルコが良かったらなんだけど・・・退院したらさ、家に」
■■■が何かを告げようとしていたが、今度はおれが遮った
「■■■」
「?」
「退院したら、今度こそドレス、見に行くよい」
「・・・マル、コ?」
「長い間、苦労かけた」
■■■の方へ向き直すと、■■■は凄く驚いていた
「マルコ・・・」
みるみる内に■■■の瞳には涙が浮かんだ
「ずっと待たせて、すまなかったよい。ただいま、■■■」
漸く見つけた■■■を、腕の中に収める
「マル、コ・・・ッ、良かった、ッ!」
おれを抱き返す腕は弱々しく、以前よりも細くなってしまったように感じた
「泣きたいのも、ずっと我慢してたよな?泣き虫なお前が・・・もう、泣いて良いぞ?」
そう云って、頭を2、3度撫でると、積を切ったように■■■が嗚咽を上げた
「・・・ッ、ぅう、あぁ・・・ッ」
「もう、頑張らなくても良いよい・・・一緒に帰ろう」
最後に抱き締めた時よりも細くなった彼女は、泣きながら微笑んでいた
ただいまおかえり
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