砂時計【マルコ】 | ナノ

第13話


例えば、おれの好きな色を君は好きだと云ってくれるだろうか?

例えば、おれの選んだ物を君は喜んでくれるだろうか?


「何が入ってんだ?」


入院して暫く経つが、サイドボードの中なんて気にした事がなかった


「何だ?」


漸く自由が利くようになり、身の回りの整理も出来るようになった


「これは・・・?」


引き出しの中から、ひしゃげた小箱が出てきた


「指輪・・・だ、ねぇ」


箱を開けると、小さな指輪と一回りほど大きな指輪が入っていた

親指と人差し指で持ち、上にかざして見てみる


「・・・“◆◆◆”?」


片方には“Marco”と刻まれていた





「こっちの方が可愛いよ?」

「そうかい?なら、それにしろよい」

「あ、でも、こっちも捨てがたいッ!」

「結局また迷ってるよい」

「沢山あって目移りしちゃうんだよね」

「でもな、指輪は1つしか買えねぇよい」

「分かってるよ」

「お前の好きなのにしろよい。おれはそれで構わねぇよい」

「うん。あとは、ドレスだけだね?」

「今日はもう遅いし、明日にするよい」

「そうだね。じゃあ、いつもの所で待ち合わせね?」

「迎えに行くよい」

「でも、その前に病院行くから。何時に終わるか分かんないよ?」

「なら、電話くれ。迎えに行くよい」

「うん」



そうだ。あの日、指輪を買いに行ったんだ

そして、次の日にドレスを見に行くからって待ち合わせの約束をしたんだ



「■■■ッ!」

「マルコ・・・」

「ん?」

「赤ちゃん・・・居なくなっちゃった・・・」



そして、彼女に子宮筋腫が見つかって流産したんだ


「■■■、転ぶんじゃねぇぞ?」

「そんなドジ、しませんから」



「変なのって、城だよい」

「ただの山じゃん」



「観覧車ぁ?」

「次は、3人で来ようね?」



「■■■」

「ん?」

「ほら・・・その、何っつーか、おれと結婚してくれ」

「・・・・・・」

「・・・ダメか、よい?」

「喜んで。宜しくお願いします」



記憶の中の女性は、■■■だったんだ

おれは、忘れてはいけない人を忘れていたんだ・・・


つけた



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