砂時計【マルコ】 | ナノ

第11話


おれの記憶の中の女性は、いつも靄が架かっている

名前を呼んでも大事な所でいつも掻き消されてしまう


「観覧車?」

「あぁ。でも、いまいちピンと来ないよい」

「そっか。でも、少しずつ思い出してきているみたいだね?」

「なぁ」

「ん?」

「きっと・・・おれは■■■を傷付けている。早く、思い出したいよい」


もどかしくて悔しくて、握り締める拳にも力が入る


「そんなに思い詰めないで?ゆっくり進もう?・・・辛いのはマルコなんだから」


そう云うと、おれの拳にそっと手を乗せた

■■■は優しい

そんな優しい■■■を忘れている自分は、何て酷い男なのだろう?


「■■■・・・おれ、頑張って早く思い出すよい」

「無理しちゃダメだよ?」


■■■の一言が、おれの気持ちを軽くさせてくれた


『マルコさん?』

「ん?」

『やっぱりココでしたか。病室に居ないから。リハビリの時間ですよ?』

「・・・あぁ。すっかり忘れてたよい」


ゆっくりと席を立つと、■■■がおれの手を掴んだ


「行ってらっしゃい」

「あぁ」


静かに手を振る■■■は、とても強く、それでいて弱そうに見えた





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