第10話
棄てられない思い出
忘れ去られた思い出
全てを繋ぎ止める術はなくて・・・
「・・・ん」
「■■■ッ!」
「・・・マル、コ?」
彼女が目を覚ました
もう、目を開けてくれないのかと思った
「良かったよい」
「ゴメンね、マルコ・・・」
「いや。それより、大丈夫かよい?」
「うん。急に・・・ビックリしたでしょ?」
「あぁ。・・・心臓が止まるかと思ったよい」
おれが俯くと、■■■はおれの手を握り締めた
「あの時も・・・マルコはこんな風に、泣きそうな顔で見ていたよ?眉毛も、こんなに下がっちゃってさ?」
彼女が指で両眉をわざと下げて見せた
「あの時も?」
彼女は、初めて自分の事を話してくれた
「流産・・・したんだよ、な?」
「うん。子宮筋腫・・・さすがに、病気には勝てなかった」
その後、“今はもう大丈夫!”と笑う君を見て、おれはとても切なくなった
「マルコ?」
「ん?」
「こんな時にあれなんだけど・・・」
「何だよい?」
「何か、思い出した事ってある?」
そう聞かれて、おれは目を閉じて考えてみた
「観覧車ぁ?」
「うん!乗ろうよ、マルコ!」
「いや、お前一人で乗ってこいよい」
「乗ろうよ?2人きりで乗れるのなんて、きっと最後だよ?」
「まぁ、そう・・・だけど、よい」何故、2人で乗るのが最後なのだろうか?
守りたかったモノ
<< >>