第9話
夢のような、多分、おれの記憶
記憶の中では誰かが
目の前では■■■が苦しんでいる
おれはもう、何も失いたくないんだよい・・・
「先生ッ!!」
『マルコさん。■■■、大丈夫ですよ』
「良かった・・・」
このやりとりも知っている
あと少しだ
おれは、あと少しで何かを掴める筈なんだ
『コレ、■■■さんの鞄だよね?』
先生は■■■の鞄を持っていた
「あ、あぁ」
『近くに落ちていたから、そうなのかな?って・・・』
「ありがとうございます」
先生は、おれに鞄を手渡すと眉間にシワを寄せた
『まだ・・・』
「?」
『持っていたんだね・・・』
「え?」
先生は、少し困ったような顔でおれを見つめていた
『母子手帳、だよ』
「ぼ・・・し、手帳?」
先生はおれにそう告げた
『彼女、妊娠していたんだよ』
「妊娠・・・!?」
『ただ、つい先日、流産してしまってね・・・』
■■■は、妊娠15週目で子宮筋腫が見つかり流産していた
筋腫のコブを取る手術を受け、経過は順調だったが運悪くおれが事故に遭ってしまった
■■■はほぼ毎日、見舞いに来てくれていた。赤ん坊を流産し、気持ち的にも落ちている筈なのに・・・
肉体的・精神的にも疲労がピーク来ていたのだろうと、先生は話していた
母になりたかった
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