第2回リクエスト祭 | ナノ

B


「どうぞ・・・」

「お邪魔するよい」

「コーヒーで・・・良いですか?」

「すまねぇ」


大人2人が傘に入るには無理があり、やはり濡れてしまった

部屋に着くと、マルコにタオルを渡しキッチンへ向かう


「砂糖、入れますか?」

「いや、ブラックで構わねぇよい」

「そうですか」


まだ拭き切れていない頭をそのままに、トレイに乗せたカップをリビングに持っていく


「■■■」

「はい」

「何かあったか?」

「え?」

「・・・今朝」


マルコが一言云いかけたあと、コーヒーに手を伸ばした


「今朝から、落ち込んでるように見えた」

「・・・そんな事ないですよ」

「さっき、店の前で逢った時、更に元気がなくなっていたように見えた」

「・・・そんなこと」

「あるだろい?」


マルコの真剣な目が、●●●を射抜く


「・・・・・・今朝、夢をみました」

「夢?」

「ハイ・・・学生時代の夢です」

「で?」

「私、マルコさんの気持ちに応えられません」

「ちょっと待て、何でいきなりそうなる!?」

「自信が・・・ありません」


そういうと●●●は俯き、頭に乗せていたタオルがパタリと落ちた


「私・・・嫌なんです」

「嫌?」

「もう・・・傷付きたくないんです。男の人に裏切られるのは・・・もう、嫌なんです」

「裏切られるって・・・」


何があったのか、聞いても良いのか躊躇うマルコ


「高校・・・3年でした。2年間片思いして、漸く自分の気持ちを伝える勇気が出て・・・初めて、告白したんです」


鼻の奥がツンとするような感覚に襲われる


「その彼とは半年、お付き合いしました。初めての彼でした。どうやって付き合っていけば良いのか、本当に何も知らない子供でした」


ゆっくりと目を閉じる●●●


「電話するのも私から・・・好きって気持ちを表現するのも私から・・・最初はそれでも良いって思ってたんです。でも、やっぱり欲が出ちゃって・・・ある日、聞いちゃったんです」

「何を?」


閉じた目をゆっくりと開けると、クシャリと笑う●●●


「“私のドコが好き?”って・・・重い女、だったんです。漸く、片思いが実って舞い上がって、相手に色々求め過ぎたんです」

「・・・で?ソイツは何て?」


マルコは、聞いても良いのかと思いながらも口を開いた


「無言・・・でした。結局、告白されたから勢いで付き合ったんだって後から知りました」

「・・・・・・」

「別れを告げられたのも、手紙でした。彼の口からは何も聞けなくて・・・手紙には、元カノが忘れられないって。そして、その1週間後・・・私の親友と付き合っていました」


睫毛に溜まった涙が、今にも零れ落ちそうだった


「ダメですね・・・もう10年以上も前の事なのに、未だに引きずってるんです。裏切られてないんです。結局、私がそう思う事で彼を悪者にして自分を守ってるだけなんです・・・」

「■■■・・・」

「私、重い女なんです・・・だから、マルコさんの気持ちに・・・応えられません。ゴメンなさい」


深々と頭を下げる●●●


「意味わかんねぇよい」

「え?」

「お前は、ただソイツの事が好きでそうしていただけだろ?別に重くても良いじゃねぇかよい」

「・・・ぅわッ!?」


急に引き寄せられ、視界が真っ暗になった

マルコの肩に顔が押さえ付けられていると気付くのに数秒要した


よく頑張った・・・俺は裏切ったりしないよい

「・・・ッ・・・ぅ・・・あ・・・」

「お前が望むんなら、好きって何回でも云ってやるよい」

「ッ・・・」

「不安だって思ったら、何回でも確認しろよい。安心するまで何回でも答えてやる」

「ぅ・・・ッふ・・・」

「だから・・・俺と付き合って下さい


ギュッと強く抱きしめられた

もう、過去の自分に縛られずに済むだろうか?

この人を信じて、前を視て歩いて行けるだろうか?


「答えは・・・急がないと云ったが、やはり今聞かせてくれないかい?」

「私で、良いんですか?」

「お前が良いんだよい」

「・・・ハァ」


大きく溜息を吐く


宜しくお願いします


もうきっと大丈夫
過去の自分にサヨナラを



「あ」

「どうしたんですか?」

「つかぬ事を聞くが、ソイツ以外と付き合った男って・・・?」

「い、居ませんよ。わ、悪いですか?」

「悪かねぇよ。寧ろ、嬉しいよい」

「何か・・・バカにしてませんか?」

「してねぇよい。っつーか、もしかして、お前しょ「マルコさんッ!!」」


END


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