叶ヤ髪商事 | ナノ

第40話


「おい、■■■」

「何ですか?」

「ちょっとおつかい頼むわ」

「断るッ!!」

「断ってんじゃねぇよ!!」


叶ヤ髪商事恒例のやりとりだ


「良いから行って来い」

「はーい・・・」

「何でベンの云うことは聞くんだよ・・・?」


社長<■■■<副社長、この構図も相変わらずだ





*****

「ってか、電車で行くのは良いけど・・・」


流石の平日

しかも、通勤ラッシュに重なっている時間帯だ

「何でスモーカーさんとガープさんのところに・・・?」


スモーカーとガープと云えば、警察の人間だ

遂に社長が犯罪に手を染めたのか?と悪い想像すら過る


「(・・・いや、流石にないか。ベンさんが付いてる間は安心だろう)」


なんて考えながら券売機へ向かう


チャリンチャリーン・・・


「・・・ん?」


小銭がばら撒かれる音と共に、足元に転がってくる数枚の小銭


「あ・・・あぁ〜・・・踏まないで下さい。あ、すみません、あー・・・」


若者が道端で転がる小銭を必死になって追い掛けている

しかし、道行く人はそんな事に構ってられないし、寧ろ“ジャマだな、コイツ”という雰囲気すら漂っている


「・・・あぁ、イライラする」


いつまで経っても転がり続ける小銭を追い掛ける若者を見て、■■■は苛々を募らせる


さっさと踏んで取らんかぁあああッ!!

「え・・・!?」

「転がってんのは、こうッ!!」


■■■は転がる小銭を次々と足で踏んづけて止めては拾って歩く


「ほら、コレで全部?」

「あ、あぁ・・・全部あります。ありがとうございます」

「こんな混んでる中で何やってんの?」

「いや、切符買おうと思ったら財布落としちゃって・・・ハハ、よくやるんです」

(よくやるのか!?迷惑な子だな・・・)


コレが世に云うドジッ子なのだろうか?

しかし、この子はどう見ても男の子だ


「あ、今度お礼します」

「はい?」

「連絡先、教えて頂いても良いですか?」

「良いよ、お礼なんて。大したことしてないし」

「そんな事ありませんよ!僕を助けてくれたじゃないですか?」

「いや、それは・・・」


あまりにトロいんでイラッとしたから、つい・・・なんて云えない

■■■は仕方なく、最近作った名刺を取り出す


「コレ、うちの会社の名刺。何かあったら利用して?」

「あ、はい。ありがとうございま・・・って、あなた、シャンクスさんの所の人なんですか!?」

「え?あ、うん。社長知ってるの?」

「はい。シャンクスさんは僕の恩人なんです!」

「恩人!?・・・変人じゃなくて?


シャンクスとこの男の子に一体なんの接点が!?


「シャンクスさん、確かにちょっと変わってるけど凄い人なんですよ?」

「ちょっと・・・かなぁ?」

「あ、コレ、僕の名刺です。お困りでしたら連絡下さい!」

「ありがとう・・・って、君、警部補なの?」

「はい」


満面の笑みで“はい”と返答するこの子

正直、このトロさでよく警部補に・・・というか警察官になれたなぁと全身を見渡す■■■


「って事は、スモーカーさんとガープさん知ってる?・・・ワケないか?」


今から仕事に行く相手も警察官だ

もしかしたら知り合いだったらなぁ、なんて淡い期待を込めて聞いてみる


「あ、はい。ガープさんは僕のお師匠さんみたいな方ですし、スモーカーさんは尊敬できる先輩です!」

「知り合いかよ!?」

「はい」

「いやね?今から、私、その2人の所に行くんだよ・・・」

「そうなんですか?では、一緒にどうですか?」

「必然とそうなるよね?」


小銭を拾っただけの相手と、まさか目的地まで一緒になるとは思わなかった

拾った小銭で切符を買い、電車に乗り込んだ


撃的な会い



「おい、起きろって!もうすぐ着くぞ!?」

「はい?・・・あ、あぁ!降りますッ!!」

「早まるな!まだあと1駅あるからッ!」

「あ・・・すみません」


シャンクスとは違った意味で疲れる相手だな、と■■■は思った


― 警察 ―

「遅くなってすみません!」

「遅いぞ、コビー!何をしとったんじゃ!」

「すみません。券売機で小銭を落としてしまって・・・ヘヘ」

「またかよ?今月何回目だ?」


またか?って云うか、そんなに頻回なの!?


「で?そこの客人は誰だ?」

「あ、私?叶ヤ髪商事から来ました、■■■です。社長に頼まれて書類を持ってきました」

「赤髪?・・・あぁ、ストーカーの報告書か?」

「赤髪のヤツにしては早かったな・・・」

「社長、ストーカーの調査してたのか・・・」


自社のトップがきちんと仕事しているんだと、今ココで知った■■■


「赤髪んトコ、こんなんで大丈夫なのかよ・・・?」


スモーカーは漠然とした不安を抱え、シャンクスの心配をしていた


END


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