叶ヤ髪商事 | ナノ

第38話


「あぁ!?」

『だから、今すぐ1人こっちに寄越せ』

「んな急に云われたってすぐに派遣出来ねぇよ!何で前もって云わねぇんだ!!」

『こっちは依頼してんだ。アンタんトコの売り上げに貢献してやる。今すぐ寄越せ』


電話口で、珍しく喧嘩している社長を見て■■■は自分のデスクに戻った


ガチャンッ!!


「ったく、今日の今日で派遣できるかよ!・・・ベンは居ねぇし、ヤソップもルウも予定がある、おれだって・・・」

「何かあったんですか?」

「・・・あ?あぁ」


■■■を少し見ると、頭を掻きむしりながらデスクの前をウロウロするシャンクス


「・・・簡単な仕事なら、私行きましょうか?」

「お前が?」

「ハイ。出られるの、私だけみたいですし・・・」

「しかし、仕事の内容云ってねぇから何の仕事かわかんねぇんだよ・・・」


以前、■■■を派遣して痛い目を見たシャンクスは、今回派遣する事を躊躇っている


「でも、せっかくの依頼ですよ?」

「そうなんだよ。アイツ、結構頻繁に依頼してくれるからなぁ・・・」

「じゃあ、行きますよ?仕事内容聞いて、出来そうならやってきます。ダメなら電話しますから!」

「・・・仕方ねぇか、なら行って来い■■■」

「はーい」


■■■は外回りの支度を始める


*****

某大学構内


「すみませーん!赤髪から来た■■■ですがー!!」


指定された場所へ向かうが、人っ子一人居ない

気配も感じない


「すみませーん!」


ガチャリと扉が開くと、1人の長身の男が出迎えた


「うるせぇ。聞こえてる・・・さっさと入れ」

「あ、ハイ・・・」


聞こえていたなら返事くらいしたらどうなんだ?と■■■は内心ムッとする


「赤髪が寄越したのはお前か・・・」

「ハイ。宜しくお願いします。早速ですが、仕事って・・・?」

「コレだ」


ドンッ!!とテーブルの上に出されたのは、大量の紙の束


「えっと・・・コレは?」

「この書類を全てデータ化しろ。明日の9時までに

「・・・ハイ?」


あれ?私の耳っておかしくなったのかな?


「明日の9時までに、この書類を全てデータ化しろと云ったんだ。書かれている数字を入力するだけだ」

「・・・云っている事は分かりますが、コレ、全部を明日までって、結構無理なんじゃ・・・?」


明らかに1日で完了出来る量ではない


「何だ?何でも屋なんだろ?さっさとやれ」

「・・・ハイ」


何て横柄な奴なんだ!?

最近の若い男ってのは、みんなこうなのか!?


「で?書式はあるんですか?」

「そこのPCのデスクトップにあるファイル2を開いて、それ真似て作れ」

「・・・あ、あった」


云われたPCで、指定のファイルを開く


「上から順にデータ入力するだけの仕事だ。バカでも出来る」

「・・・何でバカを強調するんですか」


書式を開き、内容を確認すると固まる■■■


「あのぉ・・・」

「何だ?」

どうやるんですか、コレ・・・?

「あぁ?」


真似て作れば出来る、そう云われたが明らかに見ただけでは難しい書式に戸惑う■■■


「お前は何しに来たんだ?」

「仕事ですが・・・」

「現時点で全く進んでねぇがな?」

「あ・・・う・・・」


それを云われると何も返せない


「とりあえず、最初だけ教えて下さい。そうすれば出来ますんで」

「ちッ、仕方ねぇな」


そう云うと、長身の男は渋々ながらも■■■に入力方法を教えてくれた


「ありがとうございます」

「・・・あぁ。おれは論文を書く。お前はデータ入力してろ」

「はい」


長身の男は隣のデスクに移動すると、自前のPCを開き作業を始めた


「・・・・・・あぁあああああああああああッ!!


暫くすると、絶叫に包まれた部屋


「騒がしい奴だな、どうした」

「あ、あの・・・」

「早く云え」

今まで入力したデータが消えました!

お前、何しに来たんだ、ホント・・・


PCがフリーズしたのか、■■■が入力したデータは全て吹っ飛んでいた


「何で上書き保存しながらやんねぇんだよ!?」

「しようと思ったら吹っ飛んじゃったんですってば!」

「バカかお前!?どうやったらそうなるんだ?」


男は、■■■を派遣したシャンクスの思い浮かべて頭を抱えしゃがみ込む


「とりあえず、1枚入力したら保存しろ。やり直しだ」

「はい・・・すみません」


■■■と男の長い1日が始まった


本当に手伝いに来たのか?



「ところで・・・」

「何だ?ムダ口叩いてねぇで仕事しやがれ」

お客さん、名前なんて云うんですか?

「知らねぇで来たのか?」

「ハイ。社長が、毎回依頼してくれるお得意さんだってことは教えてくれましたが・・・」

「おれはロー。トラファルガー・ローだ。この医大に通ってる」

「・・・え、アンタみたいな人が医者目指してんの!?ヤバいって!」

「テメェ、イイ度胸してんじゃねぇか」

「ギャーッ!暴力反対ッ!!」

「さっさと仕事しやがれ!」


この日、■■■とローは完徹で論文が出来上がったのは、提出時間ギリギリだったそうだ


「赤髪のヤロー、絶対ぇ泣かす・・・」

「社長のヤツ、絶対に許さん・・・泊まりの仕事だなんて聞いてねぇよ・・・」


それぞれが、シャンクスに復讐心を抱いたらしい


END


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