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11月11日ネタです。
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日本経済或いは製菓会社の陰謀によって、流星隊のミーティングルームには現在大量の棒状チョコレート菓子が持ち込まれていた。
机の上にうず高く積まれたポッキー&プリッツの山。そのおこぼれにあやかりながら、目の前の守沢先輩と鉄虎くんがそれらをライトセーバーに見立てて白熱の試合を繰り広げている様をぼんやりと眺める。食べ物で遊んじゃいけません。
そもそも今日は次のイベントの打ち合わせのためにみんなを呼び出したような気がしたのだけれど。肝心の隊長があの様子では、まともな話し合いはあまり期待出来そうにない。

「もう帰っていいすか」

私の隣で心底面倒そうに四肢を投げ出しながら、高峯くんが深い深い溜息を吐いた。

「だめ」
「納得のいく理由を述べよ」
「もし高峯くんがいなくなったら、私はこの場を捌ききれる自信がない」
「ええ……」

それって要するに道連れでしょ…と文句ばかりを並べる小さな口に、えいやとポッキーを突っ込んだ。ぐ、と彼が息を詰まらせる。

「おねがいだからいい子にしててよ。ほら、お菓子あげるから、ね」
「これ先輩が買ったやつじゃないでしょう」

半眼から青い瞳を覗かせ、高峯くんがこちらを睨む。それから少しだけ考え込むような素振りをしたあとで、ぽりぽり、とポッキーを食べ始めた。なんだかんだ言いつつ、付き合いのいい子である。
そんなことを考えているうちに、私が無理矢理口に入れた一本目がものの数秒で消滅した。「ん」と彼が唇を突き出すので、促されるまま次を差しだす。
ぽりぽり、ぽりぽり。ウサギに餌をやっているみたいでなんだかかわいい。

「っていうか、なんでプレッツェルの方から寄越すんですか」
「え、だって、最後に美味しい部分残しておいた方が嬉しくない?」
「そりゃそうですけど…手、汚れるし」

言いながら、高峯くんが私の手首を掴む。

「ほら、べとべと」

君は私のお母さんか何かか。
そうツッコミを入れようとした矢先、何を思ったのか、彼はそのチョコレートまみれの指をぱくりと口に含んだ。

「なっ…!」

本能のままに悲鳴を上げようとした瞬間、未だ教卓の周りでスターウォーズごっこを続けている守沢先輩たちのことを思い出して、ぐっとそれを噛み殺す。
抵抗しない私に気を良くしたのか、高峯くんは指先のチョコレートを舐め取ると、さらに付け根の方までしれっと舌を這わせてきた。このやろう。
幸い他のメンバーはみんなポッキーに夢中でこちらに気づかない。が、正直いつばれるか気が気ではなかった。
心臓破裂しそう。頭がくらくらする。だってアイドルとプロデューサーがミーティングルームでなんて、あらやだそんな、ふしだらな。

「……ごちそうさまでした」

やがてゆっくりそこから唇を離した高峯くんが、ぺろりと口の端の涎を舌で拭った。
無邪気な笑顔が一周回って憎たらしい。

「ッ、今日は、もう、解散!」

でも、やめて欲しいと思わなかった私も、大概どうかしてるよなあ。
怒ったポーズを見透かす様に、骨張った長い指がそっと絡められた。 
 
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