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(12.02.13)


 怖くはないのかと、言われた。

その問いに、尾浜は目をぱちくりとして、まるで意味がわからないと首を傾げる。
いつも怒って怒鳴っているばかりで生徒に怖がられていると自覚していた木下は、先生先生と慕ってくる生徒が何故そんなにも自分に執着するのかが気になった。

しばらくしてようやく言葉を汲み取った尾浜は、ああ、と手を合わせて。頷く。
そうして、えへへと十四の子供らしく笑うのだ。
彼はいつまでも幼さ、あどけなさが抜けない。


「おれ、怒る人ってね、二通りいると思ってるんです。相手を心配してるから怒るひとと、ただ理不尽に自分が気に入らないから怒るひと。後者のひとは嫌だよ、自分勝手だし、嫌い。でもにんげんはみんな後者でしょう?おれも、結構、ある。自分勝手に怒ること」


 でも、ね。
嬉しそうに楽しそうに笑う生徒は続ける。


「先生は、前者でしょう?」


 常に怒っていても、声を荒げていても、それは生徒のためだ。
それがわかっている生徒は少なくない。だから木下は生徒に好かれるのだ。

下級生にはちょっと怖がられちゃってるけどね。くすくすと笑う尾浜に木下はばつが悪そうに顔を歪めた。
このあと彼が続ける言葉が容易に想像できたからだ。
あのねと尾浜はやはり嬉しそうで、花が綻ぶように笑った。


(だから、おれは先生が好きだよ。)