■八月二十六日


「ヒバリさんって、何が好きですか?」
応接室に入って来た早々、沢田は瞳をきらきらさせてそう聞いた。
その突然な質問に、思わず戸惑ってしまった僕は悪くない。
が、もしかしてこれは告白のチャンスでは、と胸を高鳴らせた時にはすでに彼は次の言葉を続けていた。
「今度の日曜、うちにお昼ごはん食べに来ませんか?母さんもお礼言いたいって・・・。夏休みも最後だし・・・」
最初の勢いは何処へやら、だんだんと声が小さくなってくる。
というか、日曜日に、何だって?
その言葉を考えている間に、沢田が申し訳なさそうに身を縮込ませていくのが分かって、あわてて声をかけた。
「あ、いや、嬉しいんだけど、お礼言われるようなことは・・・」
「助けてもらいましたから!」
この前は君が巻き添え喰っただけなんだけどと言おうとしたが、必死な彼の姿に言葉を飲み込み、少し考えた。
「・・・そうめんが良い」
「そうめん?好きなんですか?」
「いや、君がそうめん食べてるとこ見てみたい」
「はあ・・・」
なんとなく納得いかないような顔をしてはいたが、すぐに何か思い出した様子で表情を変えた。
「あと、一緒にプール行きませんか?」
「・・・え」
突然の誘いにフリーズすること約十秒、その間沢田は期待の眼差しで僕を見ていた。
「いや・・・プールは、いい」
「そうですか・・・」
沢田はちょっと残念そうな顔をした。
が、こればかりは勘弁して欲しい。
「一緒にプール」という話だけで、あろうことか体が熱を持ち始めてしまったのだ。これが水着姿の沢田を前にしたらどんなことになるのか考えただけで恐ろしい。
「じゃ、どこか行きたいとことか、考えといて下さいね?」
目の前でにっこり笑う彼に、どきりと心臓が飛び上がる。

こんなんで、大丈夫なのだろうか・・・。

自分の自制心に不安を覚えながらも、とりあえず十一時に彼の家を訪問することが決まった。





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