■八月二十三日


ドアをノックしたのは草壁だと思っていたので、遠慮がちに入ってきた沢田の姿に驚いた。
午前八時十五分。
補講が始まるのは八時半からなので、授業の前にやって来たらしい。
「おはよう。ずいぶん早いね」
「す、すみません・・・怪我の具合、気になって・・・」
時間外立ち入り禁止と言った覚えはないのに、やたら恐縮しまくっている彼に黙って手招きをすると、恐る恐る近づき机の横に立つ。
びくびくした様子におかしくなったが、無表情で彼のネクタイを掴んで引き寄せ軽くキスをした。
沢田は金魚のように口をパクパクさせている。
「何紅くなってるの、今更」
「ふ、不意打ちだからです!人の事からかって!」
「まあ、君をからかって楽しめる位には元気だってことだね」
怒っていた沢田は一瞬きょとんとした後、照れくさそうに笑った。
「ヒバリさん昨日優しすぎたから、あのままだったらどうしようって、期待してました」
「・・・悪かったね」
あまりの言い草に仏頂面を作ったが、すぐに堪えられなくなり、二人で顔を突き合わせて笑った。





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