■八月十九日


今日、沢田は補講を休んだ。
連絡を受けた教師によれば、風邪で熱がある、ということらしい。
この暑いのに風邪を引くなんて、あの子らしいといえばあの子らしい。
いつも沢田が来ていた正午前の時間、応接室はひどく静かで、僕はただぼんやりと外を見ているだけだった。

午後、見回りコースから少し足を延ばし、沢田家の裏側から塀を上り一階の屋根に飛び移った。二階の窓からそっとのぞけば、いつも子供の声が聞こえる彼の部屋は静まり返っていた。
窓を開けて中に入ると、ベッドから小さく寝息が聞こえる。
壁側を向いている沢田を上から覗き込めば、思ったより安らかな寝顔をしていて安心した。
ベッドの淵に腰をかけ柔らかい髪を撫でてやると、軽く身じろぎをしたが起きることはなかった。

「おやすみ」
耳元で小さく声をかけ、彼の髪に鼻先を埋めて髪の匂いを嗅ぐと、起こさないようにそっと、僕は窓から外に出た。






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