■八月八日


沢田は応接室の扉を開けるなり、僕に飛びついて昨日の野球部の雄姿を語って見せた。
昨日の決勝戦で本校野球部が優勝したのは知っていたし、応援に行った沢田が自分の事のように喜んでいるであろうことは予測が付いていた。
しかし、「山本がホームラン三本打った」だの「凄くかっこよかった」だの目の前で他の男をベタ褒めされれば、気分だって悪くなる。
とどめが、
「今日はこれから優勝祝いに、お昼奢る事になってるんで、早めに帰ります」
などと言われれば、咬みつきたくもなるものだ。
キスには慣れ始めていた沢田だったが、まさか唇に咬みつかれるとは思わなかったのだろう。目を白黒させていた。
口の中に少し血の味が拡がった頃ようやく彼の唇を放すと、口を尖らせながら、
「お仕置き」
と小さく言った。
沢田は訳が判らない様子で、きょとんとしながら僕の事を見ていた。





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