■八月四日


応接室に入るなり、沢田は「どうしたんですか!」と叫んで駆け寄ってきた。
一瞬何の事か分からなかったが、彼の視線が僕の口元に集中しているのに気が付き、ああ、と呟き口端を擦った。
昨日の午後、群れを咬み殺していてやってしまった。
たいした傷ではなかったが、僕の方が傷を作るなど少なくともここ一年はなかった事なので、草壁も驚いていた。
たいした相手でもなかったのに、油断をしていたのかも知れない。

沢田は心配そうに傷口に触れ、「気を付けて下さいね」と小さく言った。
少し眉を寄せたその表情を見ていたら、なんだか胸が痛くなった。




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