■八月五日


彼の来るのがいつもよりちょっと遅かったため、教室を覗きに行こうと渡り廊下を出た。
するとそこから、グラウンドの水道に寄りかかりながら話をしている、沢田と野球少年が見えた。
じっと見ているとそのうち沢田が僕に気付き、彼に手を振りながらこちらに駆けて来た。
「どうしたんですか?」
「いや、用事を済ませた帰り・・・。話、終わったの?」
息を弾ませて話しかける沢田に、なんでもないようなそぶりで聞いたが、内心少しイラついていた。たかだか友人と話していただけでこんなにも気になるとは、自分でも情けない。孤高の委員長と歌われた男は何処へ行った。
「はい!今度の日曜日に野球部の地区大会があって・・・決勝戦ですよ!俺応援しに行くつもりなんです!」
もちろん並盛野球部のスケジュールは風紀委員長として把握しており、本校の名声のためにも全力で助力をするつもりであったが、まるで自分のことのように喜ぶこの子を見ていると、複雑な気分になる。
日曜日、か。
そういえば、沢田と学校以外(彼の家に押しかけたことは除いて)で会う事はなかったなと、改めて気が付いた。




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