■八月二日


扉の前で、草壁が硬直していた。

二人ともキスに夢中になっていて、ノックの音に気付かなかったのだ。
いや、沢田は気付いていたのかもしれない。
そういえばさっき、キスの最中に背中を叩いていたような気もする。
「・・・何」
仕方なく唇を離し草壁を睨むと、彼ははっとして「失礼しました」と一礼し、慌てて扉を閉めた。
ため息を一つ付き沢田の方に視線を戻すと、いつもより三割位紅い顔の彼と目が合った。
途端ぱっと俯き僕の胸元にしがみ付くようにした彼が可愛かったので、その前髪をかき上げてぺろりと舐め上げた。
沢田は一瞬びくっとしたが、そのまま動かなかった。

後で草壁を咬み殺すつもりでいたが、まあ許してやってもいいと思い直した。



prev next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -