■七月十三日


朝応接室に入ると、やしの木の格好をした赤ん坊が僕の席でまったりとエスプレッソを飲んでいた。
「ちゃおっす、ヒバリ」
「やあ、久しぶりだね。少し見ないうちに大きくなったんじゃない?」
「久しぶりなのはてめーが会いに来ないからだろうが」
そういえばそうだ。
以前は頻繁に戦いを挑みに行っていたのに、最近はすっかり忘れていた。
「・・・仕事が忙しかったからね」
「うちのダメ生徒のお守りか?」
なんだか見透かされている気がして口を閉ざした。
確かに僕の興味の対象は赤ん坊から沢田に移っている。しかしそれを認めるのはいささか抵抗があった。
「まあ、いいけどな。一つ確認しておきたい事があってな」
赤ん坊は僕をじっと見据えた。
「ツナはいずれ俺がこの手でボンゴレのボスに仕立て上げる。その時お前は守護者で・・・部下だ。それで良いのか?」
「良いって、何が」
「ツナにとっては大勢の中の一人でしかないって事だ。それにボスになれば跡継ぎも必要になるからな。あれが嫌だと言っても結婚はさせる・・・まあ、愛人ならかまわねえが・・・。いずれはそうなる事も覚悟しとけ」
「だから何。関係ないし、僕は群れる気はないよ」
赤ん坊はきょとんとして僕を見ていたが、突然いやな笑いをこぼした。
「ふん・・・そうか。ならいい。また暫くしてから出直して来た方が良さそうだな」
そのニヤニヤ笑いを見ていると、なんだか馬鹿にされているような気がしてむっとした。
「赤ん坊。勝負は?」
「またな、中坊」
言い残すと、窓からひらりと飛び降りていってしまった。
その後、彼が言ったことを反芻してみたが、何を言いたかったのかは分からなかった。
唯一つ、この間草壁が寄越した意味ありげな視線と関係があるのだということは、何となく感じていた。




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