■七月五日


「・・・彼のボブはおじさんの食べた林檎の木を家に持って帰った・・・?」
「・・・沢田、それは日本語がおかしい」
今日の試験勉強は英語らしい。
沢田は数ある苦手教科の中でも特に英語が苦手らしく、さすがに草壁も苦戦していた。
英語能力というよりも、日本語能力に問題があるような気もするが。
「今日はここまでにしようか」
ようやく今日の授業が終わったようだ。二人で片づけをし、草壁は僕に一礼をして出て行った。
去り際、僕に意味ありげな視線を投げながら。
さっき沢田が来る前に草壁は書棚の整理をしながら珍しく自分の話しをした。
彼には弟が居り、その子が沢田に雰囲気がよく似ている、沢田には幸せになって欲しいと。そしてやはりさっきのような意味ありげな視線を投げたのだ。
彼が何を言いたいのかは分からない。
しかし恐らく、今の僕と沢田の関係のことを言っているのだろう。
草壁は僕らのことを知っているのだから。
「ヒバリさん、ありがとうございました」
「うん、明日からだね、がんばって」
彼の唇にそっとキスを落として、僕は沢田を見送った。

僕は何故彼にこんなことをするのだろうか。
彼はどう思っているのだろうか。




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