■七月一日


面白くない。

今日も沢田は草壁に勉強を教わっている。
昨日沢田が帰った後、「やはり委員長が教えた方が・・・」という提案を断ったのは僕だ。
僕には沢田に理解させる自信がないし、第一彼のことを考えればその方が良い。
しかし、面白くないものは面白くない。
目の前で頭を近づけながら一つの教科書を見る姿は妙に仲がよさ気だし、嫌でも目に入る嬉しそうな沢田の表情は癇に障る。
しかも下校時から草壁に待機させているため、二人きりになる時間がない。

本当に、面白くない。

一時間半ほど過ぎた頃だろうか。
今日の勉強は終わったらしく、二人が片付け始めた。
「ありがとうございました」
「うん、また来週な・・・では委員長、お先に失礼します」
一礼をして、草壁が出て行った。
やっと二人きりにはなったが、正直いろいろとタイミングを逃してしまった気がする。
は、とため息をつき、
「また帰ってからも勉強だよね。もう少しだからがんばって」
と声を掛けると、沢田が近づいて来て、
「あの、すみません、お仕事の邪魔しちゃって・・・」
と申し訳なさそうな顔をするので、僕は首を振った。
「悪い。僕が教えるって言ったのに・・・」
なんと言うか自分が情けない。それが顔にでも出てしまったのか、沢田は「そんなこと」と呟きながら下を向いてもじもじし出した。
やがて顔を上げると突然僕の腕を掴んで、
ちゅ、と
音を立ててキスをした。
「あの、じゃ、さようなら!」
真っ赤な顔で走り去っていく後姿を呆然と見つめながら、頭のどこかでは冷静に考えていた。

足りない、と・・・。




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