■六月二十九日


信じられない。
何なのだ、この理解力のなさは。

今朝校門を潜った沢田は、風紀検査をしていた僕の元へやって来た。
「リボーンに許可もらいました。ちゃんと勉強するならいいって」
嬉しそうに告げ、教室へと入っていく沢田を見送りながら、内心とてもほっとしていた。
また毎日沢田は応接室にやって来る。
試験勉強など、僕の仕事の合間に分からないところだけ解説してやればよい。そう思っていた。
そして放課後。
やって来た沢田に何度も軽いキスをして、頭を抱き抱えられた後、沢田は数学の教科書を広げ、僕は風紀の仕事に取り掛かる・・・つもりだった。
沢田はペンを持つとすぐに、落ち着かない様子でこちらをちらちらと盗み見た。
ああ早速分からない問題が出てきたかと苦笑しながら、ソファーの隣に移動する。
「何処?」
と尋ねれば、嬉しそうな顔で教科書を指差す。
「ああ、これは・・・」
こうやるんだよ、と目の前で解いて見せ、「分かった?」と聞けば、「・・・へ?」と呆けた様な顔で僕を見返す。
しかもそれが全問である。
すでに何処がどう解らないのかさえ、僕には理解できない。
これでは仕事どころではない。
次第に力尽きて行く僕を見て、沢田はへの字に眉を寄せながら
「やっぱり俺、家でやったほうが・・・?」
「そんなことない」と言う言葉を返すのに、一瞬遅れた事は事実であった。



・・・恐れながら委員長、
明日からは私が代わります。







prev next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -