■六月二十三日


下校のチャイムがなって五分経った。
僕は待ったのだ。たとえ五分であろうと。
こんなに僕を待たせるなんて許せない。
大体草壁の言うとおり、待つなどと言う行為は僕の性には合わないのだ。
応接室を出て2−Aの教室に向かうと、廊下にいた生徒たちの群れが僕を避けて次々と左右に散らばってゆく。
教室にはまだ半数ほどの生徒たちが残っていた。
沢田もその中でゆっくりと・・・本当にゆっくりと、帰る仕度をしていた。
僕が足早に近づき目の前に立つと、彼は身体をこわばらせた。
気に入らない。
「・・・避けられるの、ムカつくんだけど」
沢田を見据えながら低い声で言うと、びくっと身体を震わせた。そういえば、以前はこうだった。四月の、あの日までは。
あの頃は何でもなかったのに、今そういう態度を見せられるとひどく癇に障る。
「何か言いたい事があるなら、言えば」
視線を外さずそう言うと、沢田は暫く俯いて口ごもっていたが、その内のろのろと顔を上げた。
その顔を見て、僕は思わず怯み、不機嫌だったことも何処かに吹き飛んでしまった。
沢田は頬をうっすらと紅く染め、瞳を潤ませて僕を見上げていたのだ。
僕の心臓は激しく高鳴り、頭の中は真っ白になっていた。
「沢・・・「雲雀さん、おれ・・・っ」
沢田は潤んだ瞳で僕を見つめる。
「俺、は・・・」
僕はごくりと喉を鳴らし、沢田の言葉を待った。
「雲雀さんにお父さんになって欲しいんじゃなくて・・・雲雀さんのお父さんになりたいみたいです!」

・・・彼の言うことは、よく判らない・・・。






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