■六月十五日


就業のチャイムがなって暫く経ったが、沢田は来なかった。
先日のこともあるので様子を見に行くと、まだ教室にいて、あの髪の色の薄い女子と話をしていた。
余計な心配をした自分がばかばかしく思え、ムカツキを感じながら声をかけた。
するとざわついていた教室が一瞬静まり返り、生徒達の視線がこちらに集中する。
まあ、いつものことではあるが。
僕は気にせず沢田の隣に立ち、話をしていた女子に見せるように沢田の髪を掻き回した。
「ほら、応接室に仕事が待ってるよ」
そして、上目遣いに僕を見る彼の頭に手を置いたままで、視線を彼女に移した。
「この子、連れて行くよ」
これからは僕との時間だから。
牽制のつもりで彼女に笑顔を向けると、途端に何故だか顔を紅らめた。
今まで僕を前に青ざめることはあっても紅くなる女子はいなかったので不思議に思ったが、そのまま「行くよ」と沢田の方を向き直ると、なぜか彼までもが微妙な表情で僕をじっと見つめている。
訳が判らずそのまま背を向けて歩き出すと、後ろからとてとてといつもの足音が聞こえた。

その日沢田は応接室に戻った後も、時々ちらちらとこちらを伺っていた。




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