■六月九日


放課後、応接室にやってきた沢田の目元は、痣ができて青くなっていた。
あんな目にあって、何故来るのだろう。僕は複雑な気持ちだった。
「痣・・・」
僕がその目元にそっと触れると、沢田はなぜか微笑んだ。
「今回はたまたま絡まれちゃったけど、これなら少しは役に立てますよね?」
何を言っているのか判らずにいると、
「囮に、なれますか?」
その言葉を聴いた途端、体中が冷たくなった。
彼はまだ考えていたのだ。あのくだらない計画のことを。まだ覚えているのだ。僕が・・・その計画を立てたということを。
僕は堪らなくなって、思わずその小さな身体を抱きしめた。
「そんなこと、望んでいない」
固まったまま抵抗しないのをいいことに、抱きしめる腕に力をこめた。
「君が傷つくのを、見たくない」
この子は弱すぎるのだ。だから、僕ともあろう者が、守ってやりたいなどと思ってしまうのだ。
自分にそう言い聞かせながら抱きしめる腕を離さずにいると、不意に沢田が動いて、少し距離をとった。
「ありがとう、ございます。あの・・・」
見上げるその顔はほんのりと色づき瞳は潤み、その表情を見つめていたら次第に、底の方から湧き上がってくる何かに気付きそうになって戸惑った。
沢田も同じように戸惑った表情を見せ、一瞬下を向いたが、すぐに決心したように、言った。
「でも、この傷は雲雀さんが・・・」
・・・そうだった。





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