■六月六日


十二時三十五分。
この時間に応接室の窓から渡り廊下を見下ろしていると、弁当を抱えた小動物が茶色い髪を揺らしながら走ってくる。
とてとてと音がしそうなその走り方は、いかにも遅そうだ。
ふと、渡り廊下の途中で止まり、振り返った。
何かと思い観察していると、後ろから彼の友達だと言う、野球部の男がやってきた。
笑いながら一言二言言葉を交わすと、急に沢田が紅くなり俯いた。
野球少年は笑って、そのふわふわの髪の上に手を置いた。
僕が黙って窓から離れると、暫くの後、沢田が姿を現し、楽しそうに話しながらローテーブルに弁当を広げだした。
何故だろう。今の僕は、この髪にさえ触ることができない。



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