■六月二日


梅雨に入り始めたのだろう、朝から雨が降っていた。
風紀の仕事で準備室に行った帰り、渡り廊下のところで沢田に会った。
彼は手にプリントの山をかかえ、
「先生に言われて、取りに行ってたんです。雲雀さんは、お仕事ですか?」
と笑った途端、僕らの間に、小さくて黒くてもじゃもじゃしたものが凄いスピードで駆け抜けた行った。
沢田は驚いてバランスを崩し、渡り廊下の外に倒れそうになった。
僕はとっさに手を伸ばし、彼の二の腕をつかむと。

ふにっ

「あ、ありがとうございますうっ!?」
そのあまりにやわらかい感触に動揺して思わず手を離すと、沢田はそのまま水溜りに頭から飛び込んだ。髪も制服も抱えていたプリントも、全部びしょぬれになっていた。
「な・・・なんで!?」
沢田が情けない顔で僕を見上げるので、今の自分の顔を見られたくなくてそっぽを向いた。
「君ってほんとに、間抜けだよね」
そう言い捨てると、彼に背を向け、その場から立ち去った。
心臓がまた昨日の様に高く音を立てて止まらなかった。







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