■五月三十一日


仕事にも慣れてきたのか、始めたばかりの時よりは効率が良くなって来た様に思う。(あくまでも比較対象は彼自身だが)
しかしまあ草壁もよくこんな、誰にでもできるような雑用ばかりを集めてくるものだ。
もちろん、雑用だけならいくらでもあるが、沢田用のこれらの仕事は他とは訳が違うのだ。
まず第一に、仕事をしやすいように纏めてある。これだけでも一手間かかる。しかも応接室の外に出る必要がないような・・・資料を調べることもどこかに運ぶ必要もない仕事であり、事務用品まで全て用意されている。
なんというか、沢田の仕事以前に、草壁の有能さを実感させられる数日である。
何故そこまでするのかは、知らないが。
ちら、と沢田のほうを見ると、彼は気付く事もなく一心に仕事に打ち込んでいた。
彼の仕事中は、以前のように視線を感じることがなくなった。
・・・そういえば、目が合うこともない。
ふと、沢田が見つめている青い付箋が憎らしく思えてきた。



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