■五月三十日


昼休み、沢田は弁当を携えながら、ヤマアラシのような頭で応接室にやってきた。
「渡り廊下通ってきたら、こんなになっちゃったんです」
朝からの雨は小雨になってきたが、まだ風は強いままだった。しかしこの子はどれだけくせっ毛なんだ。
うっすらと水滴の付いた髪を手ぐしで整えてやると、彼は下をむいたまま言った。
「そういえば、この前京子ちゃんの事助けてあげたんですよね?」
何のことか分からず、手を止めて沢田を伺い見ると、彼もちょっと上目遣いに僕を見た。
「京子ちゃん、雲雀さんのこと褒めてましたよ。かっこいいし、ホントは凄く優しいって・・・。」
そう言うとまた、目を伏せる。
以前、弁当箱を洗って返した事を彼の母に褒められたときは、とても嬉しそうに話していたのに、今度は何やら複雑な表情だ。
もしかしたら、沢田は彼女を・・・。
僕が何も言わずにまた髪を整え始めると、床を見つめたままぼそりと呟いた。
「ホントは優しいなんて、俺のほうが先に知ってたけど・・・」




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