■五月二十日


見回りの最中、校舎の本棟と別棟の間辺りで女子が独り佇んでいるのを見つけた。
「何してるの、授業中だよ」
と声をかけると、彼女は驚いて振り向いた。
あの女子だ。沢田とよく話している、薄い色の髪の・・・。
「あの、スカーフが・・・」
見ると、制服の赤いスカーフが、木の割りと低い位置に引っ掛かっている。
僕は無言で近づくと、ジャンプしてそれをとり、彼女に手渡した。
その女子からは柔らかい匂いがした。
近くで見ると確かに、可愛いといえる顔立ちだ。美人というよりは子供っぽい。沢田は、こういうのが好みなのだろうか。自分が子供みたいな顔をしているくせして。
「あの・・・?」
まじまじと眺めてしまっていたようだ。彼女が怪訝な顔をし出した。
「早く教室に戻りな」
と言い捨て、背を向けた。
後ろの方で、礼を言っているのが聞こえたが、そのまま見回りに戻った。



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